今では当たり前になりつつある世界を変えるNPOのあるべき形の一つ『マイクロソフトでは出会えなかった天職』(ジョン ウッド)

 

社会貢献は余った金を渡す施しでもなく、状況を哀れんだことによる寄付でもない。社会起業という言葉が一般的になり事業によって社会を変えていこうとする団体が増えている。でも、寄付を集めて現地の活動に投資して現地の暮らしを変えようとする団体が主流で、今でも団体の数でいえばこちらの方が多いだろう。

現地に図書館を作る。本を読めない子どもをなくす。

寄付を集めて現地の困っている人たちを助ける。

そんな団体の頂点であり手本になる団体の1つができて大きくなっていくお話し。ひと昔前には社会起業に興味がある人のバイブルとして読まれていた本だけど読んだことがなかった。

社会問題に興味があるけどコンサルタントとして働いて自分の能力を高めていく中で巡り巡って創設の話が本の中に詰まっているルームトゥリードの支援担当に社内でなった。勉強のために読んでみるとこんな考え方なのかと知ることができるとともに本を届けたいという気持ちの熱さとNPOだとしても成果に拘らないといけないことの両方が伝わってくる。

NPOだから成果にこだわらないのは違う。

創設者がマイクロソフト出身ということもあってNPOにとっての新しいビジネスモデルを適用していると記している。

「NPO界のマイクロソフト」をめざすルーム・トゥ・リードは、慈善活動の新しいビジネスモデルとしても注目されている。主な方針は活動の成果や出費の内訳を詳細な数字で報告する。人件費などの運営コストを抑え、実際の活動に最大限の投資をする。地域社会も資金や労働力を提供し、住民が主役となってプロジェクトを定着させる。地元の優秀なスタッフを集め、地元の文化に合わせたプロジェクトを育てる。

ジョンウッド.マイクロソフトでは出会えなかった天職(Kindleの位置No.3390-3395)..Kindle版.

これは慈善活動は「ビジネスのルールで動いていない」現実だったり投資家たちに「非営利団体には「仕事は九時から五時まで」の精神の持ち主が多すぎる」と言われたことからきている。仕事として人からお金を預かって現地に投資するという考え方で仕事をするにあたって必要なことが詰まっていて、これは寄付を集めて社会課題解決に使う団体のスタンダードになっている。

寄付を集める時のルールとしても罪悪感をマーケティングに利用しないことからこんなことも言われている。

よりたくさんの学校と図書館を建設する資金を集めるために、これからも僕は何でもする。ただし、ほかの慈善団体が実際に成果をあげているひとつの方法だけは、意識して避けている。僕が「泣き落とし作戦」と呼ぶものだ。世界に貧困があることはだれでも知っているし、ほぼすべての人がそのことを悲しんでいる。一部の慈善団体は、ハエにたかられた子供や、土ぼこりのなかに横たわっている栄養失調の家族の写真を見せると、寄付金集めに効果があると考えている。実際にそうした活動をしているセレブもいるが、僕に言わせれば、哀れみを利用して寄付者に懇願することは、貧困者をおとしめることになる。そのような写真を見せることは人間の尊厳を否定している。罪悪感をマーケティングに利用してはならないと、僕は思うのだ。

ジョンウッド.マイクロソフトでは出会えなかった天職(Kindleの位置No.1345-1351)..Kindle版.

また、団体の職員さんと関わっている時に感じた前を向いて進んでいる感はここからきているのだろうと思える考え方にも触れられる。

僕はパムに、今日は中国のお気に入りの格言を思い出したと話した。「それはできないと言う人は、それをしている人を批判するべきではない」

ジョンウッド.マイクロソフトでは出会えなかった天職(Kindleの位置No.2288-2289)..Kindle版.

確かに活動に関わっているとオシャレで子どもたちの笑顔の写真にたくさん触れることができる。だからこそ、関わり続けることができるのかもしれない。

自分の力で世界が変わる時間の喜びを探す。

社会課題解決を主たる目的とするソーシャルセクターの人たちと関わっているとお金を稼ぐことを主たる目的としているビジネスの世界では味わえないことがあり、ポジティブな気分になることもあればネガティブな気分になることもある。もっとソーシャルセクターに入っていこうかと思うこともあるんだけど仕事でまだ楽しめているからいいかなと思える自分の方が強い。

会社が大きくなることで「努力と成果の相関関係が小さくなる」ことを確かにと感じる。自分の代わりなんていくらでもいる現実から自分しかできないことがあればチャレンジしてみたいと思う一方で、本の中で言われているように寄付やボランティアで「世界を変えるための手助け」をすることにとどめてビジネスの場にいようと今は感じている。

ただ、「努力と成果の相関関係が大きくなる」場を探すことや自分の興味であるこれからの社会で生きていける人を育てる教育への関心はどこかに繋げたいと思っていたりするので考えていこうと思ったりする。

世界的に有名な社会起業家がマイクロソフトをなぜ辞めて本を届けることを仕事にしたのかから自分のやりたいことを考え直すと共に人から寄付を集めて活動する団体のあるべき形を知ることができる。その上でちょっと団体に寄付もしたくなる。社会課題解決を仕事にしたい人にとって、自分の目指す形は寄付を集める形じゃないからとして昔の本にするんじゃなくて、社会課題解決を仕事にすることの意味を考えるきっかけにするために今でもバイブルにすべき1冊。

【手に入れたきっかけ】

支援している団体の本を読んでいないことに気づいて。

【オススメ度】

★★★★★

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。