自分の性別を変えたいと感じる時期は2つ。
自分の性別を変えたいと思うタイミングというのは人生に2回あるという話がまずは驚いた。1回目の思春期というのはなんとなくしっくりきたが、もう1つのタイミングとして中年期があり、30代から40代に差し掛かるぐらいに自分の性別について考え直しやすくなるとのこと。
そんな中年期に自分の性別を変えたいと感じるようになり、家庭や職場、友人関係も含めて変えていった総務部長のノンフィクション。おじさん部長が最後にはスカートを履いて会社に出社して働いくところまでの物語は各社で具体的な取り組みが進んでいっているセクシャルマイノリティに対する考え方を勉強するきっかけとしてもおすすめできる。
思春期の頃にもそんな気持ちはあったが、男性としてきて結婚し、一人の子供を持っている父親が ゲイバーでのお遊びをきっかけに女性になりたいと思っていく。
性同一性障害は”障害”なのか…?
女性の格好をしていくことから始めたうえで、綺麗になりたいということで女性ホルモンをどのように体を中に入れていくのかという話だったり性別適用手術、トイレはどちらを使うのかなどセクシャルマイノリティに関わる実生活の話が並んでいく。障害として診断書モデル性同一性障害に対する考え方についても病気として診断されているが、担当の医者は「生き方」だと伝えるシーンがある。
他の人の生き方に対して会社から制約をかけないのと同様にトランスジェンダーを含むセクシャルマイノリティを尊重するのが当たり前だろう。
会社はどうあるべきなのか
妻との冷めてしまったやり取りや友人との会話を読んでいるとプライベートの方が難しい部分が出てくるのかなと思う。会社に対しては社内に一斉送信したメールとその後日談はこの小説の最も読みごたえにある箇所だった。 自分の性自認について触れた上で「襲ったり食べたりしない」とか「ビジネスに障害にならないようにしていく」などが含まれたメールには魂がこもっているなぁと思わされた。
会社は社長も含めて広い心で受け入れているということもありつつ、著者自身が示している「仕事はいつも通りやることをやっていることで支障をきたすようなことはない」という社風は全ての会社にあるものではないのかもしれない。多くの会社がこの本に出てくるような会社にならないといけないということを念頭に読んでみてほしい。
会社はやることをやっていればなんとかなる一方で、妻と子供がいる家庭でどうするのかが会社以上に人生の途中で性別を変えるということが難しいのだろう。生き方を会社よりも共有しなければならない家庭という場では真剣に向き合って話を続けるしかないのだから会社では障害にならないようにしなければいけないなと。
【手に入れたきっかけ】
人事の本を探している中で気になったので
【オススメ度】
★★★★★
小檜山 歩
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