「銀の弾がない世界」に対する1つの弾になり得る 『「納品」をなくせばうまくいく』(倉貫義人)【Kindle・本】

 

「銀の弾がない世界」に対する1つの弾になり得る。

ソフトウェア開発では有名なフレデリック・ブルックスが論文で書いたようにシステム開発には狼を一発で倒すような弾丸はない。いろんな弾を使って地味に、確実に狼を倒していくしかない中で新しい弾をくれた。

相手は覚えていないと思うが、以前とあるイベントでこの本を書いた倉貫 義人さんを見かけたことがある。経営者ではなく、エンジニアっぽい雰囲気と物腰の柔らかさが印象的だった。

そんなこともあって、倉貫さんの会社であるソニックガーデンはずっと気になっていて、ブログを購読したりしているのだけど、本を出したってことで遅れながら読んでみました。

内容はソニックガーデンが行っている「納品のない受託開発」の紹介が核となっている。「納品のない受託開発」のやり方だけでなく、背景にあるソフトウェア開発における倉貫さんの哲学やソニックガーデンの中で行われている育成の方法など多岐にわたる。

ソフトウェア開発に銀の弾がないようにこの「納品のない受託開発」は銀の弾にはならない。ただ、このやり方が「納品のある受託開発」よりも上手くいく場合もあると思うので、1つの弾の補充だと思って読むといい。

「納品のない受託開発」はソフトウェアの受託開発に関わるはしくれのひとりとしてやってみたいってだけではなくて、やらないといけない姿勢を提示する。「納品のある受託開発」のプロジェクト現場ではタイミングによっては似たようなことをやることもあるけど、プロジェクト全体でやることはない。

というよりも納品がないってことは基本的に終わりがないってことだから、プロジェクトとは呼ばない。だから、「納品のある受託開発」で「納品のない受託開発」を行うことは出来ない。

「設計→開発→受入→納品」の1つのサイクルを”1回だけ回す一般的なソフトウェア開発”とは違うやり方の1つが「納品のない受託開発」。

機能を見せながら何をするのか、何のためにやるのかをお客さんと決めながら進めていく。相手のビジネス、やりたいことを徹底的に理解し、本当に必要なものを作ること。開発経験者として憧れるだけでなく、私が関わっている「納品のある受託開発」でもやらないといけないことだと感じさせる。

本の大部分は「納品のない受託開発」に関する説明なんだけど、もう1つ気になったというか、参考にしたいポイントがあった。それがエンジニアをどう測ってどう育てていくのかの話。

月100万とかそれ以下でお客さんに買われて仕事をするエンジニアをただの部品とではなく社員として捉えてどう育てていくのかを考える上で参考になりそう。

「納品のない受託開発」を行っている筆者の会社においてどうやってエンジニアを評価しているのか、どんなキャリアパスをエンジニアが描いているのかを提示してくれている。仕事のレビューの仕方である「KPT」はプロジェクトの現場でも試してみたくなった。採用についても人を見極める際のポイントである「TIPS」を紹介していて参考になる。

ソフトウェア開発に関わる人間としてこの本が提供してくれる新しい弾を装備しとくのも悪くない。

【引用】

人月の最大の問題は、どんなエンジニアが担当しても同じソフトウェアが完成する、という前提に立っていること

「納品のない受託開発」では、「オーダーメイドの受託開発」と「納品しない」、そして「派遣しない」の三つを満たすことを実現しました。

実は、ソフトウェア・エンジニアと、時間で働く人材派遣は、相性がよくありません。本来、ソフトウェア開発におけるエンジニアの仕事は、時間に換算できるものではないからです。決められた時間内に同じ仕事場の一画に座り続けて仕事をすることではなく、仕事の成果を見るべきです。

エンジニアが打合せの際に顧客に必ず確認するのは「なぜその機能が必要なのか」です。

【手に入れたきっかけ】

気になっていた会社、ソニックガーデンの社長である倉貫さんが出版した本なので購入!

【オススメ度】

★★★★★

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【リンク】

銀の弾などない – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%80%E3%81%AE%E5%BC%BE%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AA%E3%81%84



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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。