見張られていなくても、いつ見張られているか分からないという恐怖は人を委縮させるんじゃないか。~「善き人のためのソナタ」(ドイツ語・字幕)~

「東欧史」の授業の一環で見た社会主義政権下東ドイツの秘密警察に関する映画。人への迫害を劇作家とある秘密警察の苦悩を描く。
いろいろな人によってマークされる様子が薄く見える。
自白させるシーンでの自白しないと「奥さんを逮捕する」という強迫、東欧のちゃっちい工場のセットもリアル。
体制に忠実に見える劇作家が監視される中の葛藤、思ったまま自由に書ける演出家になりたいけど、表に出せない現状。「ネクタイは中産階級のしがらみの象徴」と言われるなかで悩む。
幹部のやりたい放題によって、ヒロインは犯され、行動を探られ、エリートの苦悩から党員の売春へ。
孤独と“書けなくなること”を恐れる。幹部のやりたい放題にヒロインを行かせたくない主人公。しかし、その中でヒロインに「あなたは幹部の力を必要としないのか」という話をされる。幹部になびけば全てを決めることができる。体制の力を借りて劇作家として作品を書いている主人公に対して、「寝ているのも同じ」という言葉がその社会に生きる難しさを示している。
その社会で、数えないものとして自殺の数が上げられ、それがポイントになっていく。証拠隠滅なども甘いのが気になった。
感想としては綺麗に描きすぎなんじゃないかな。特に、盗聴している者の苦悩はこんなにすがすがしいものなのかな。と疑問に思った。
映画全体の絵は物凄い美しい。秘密警察の中で暮らす人々を綺麗に映し出している。その中で、空気感というのも十分伝わってくる。でも、こんなに直接的な監視だったのか。という疑問符は残る。確かに監視などの手段において人々は監視されていたんだろう。でも、密告などはあまり描かれていなかったし、仲間のように描かれていた人々は裏切らなかった。本当にそうだったのか。監視社会において監視の空気が持つパワーは大きいと考える。見張られていなくても、いつ見張られているか分からないという恐怖は人を委縮させるんじゃないか。その部分があまりなかったのが残念。でも、絵の美しさとひきこまれることに☆4つ。

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。