男性がサポートしないと女性は活躍できない世の中は男性のこだわりでできている。『仕事と家庭は両立できない?』(アン=マリー・スローター)

 

女性が頑張っていないから、「女性活躍」が進まないんだとふとしたときに言ってしまう男性は多い。総合職の奥さんと話すと、女性がキャリアの上で上り詰めるには男性よりも様々なことを考えなければならないということを改めて感じる。

少しでも多くの部分を平等にしておきたいと思う中でも必ず出産は女性が行うということで、産前産後14週間にわたって会社を休むことになる。男性と女性の違いはそれだけなのに、14週間だけの違いではない現実がある。キャリアの為に子供を作ることを諦める女性もいる。

仕事のうえで大企業の人事の方と接する機会が多いんだけど男性中心の考え方というか雰囲気があることは否定できないように感じてしまう。クリントン大統領の時に国務省で女性ではじめて政策企画で本部長になり、大学教授になった著者がそんな仕事上の男女の差を自らの経験とリサーチによって噛み砕いていく。

女性、男性、職場のそれぞれには今の構造を支えているウソがはびこっていると指摘し、女性の活躍が進まないことを過程や個人の問題にしてはならないと指摘する。それぞれのウソについては確かにと思うのは実体験と科学による分析を交えて説明をしているからなのだろう。

女性のウソ、男性のウソ、職場のウソの1つ1つについて、印象に残った文章を紹介する。

女性のウソ

現実には、仕事でトップに昇った女性の多くは、家事を平等に分担していない。ほとんどの場合、仕事で成功を極めた女性には、家庭で半分どころかはるかに多くの負担を背負ってくれる配偶者がいる*24。それなのに、若い女性の多くは一緒にお皿を洗ったりオムツを換えてくれる夫を夢見るだけで、自分がトップに昇るためには夫が仕事で上に昇らずに家庭を支えなければいけないとは認めたがらない。彼女たちは、夫が自分より仕事で成功できないと嫌なのだ。トップに立つ男性のほとんどは、妻の仕事の成功にはこだわっていないのに。

アン=マリー・スローター;篠田真貴子.仕事と家庭は両立できない?(Kindleの位置No.732-737).NTT出版株式会社.Kindle版.

仕事の空き時間で子どものオムツを替えたりご飯をたまに作るだけでイクメンとかもてはやされる考え方は確かにあって取り上げる人たちにも問題はあるんだけど、女性たちがその程度でよしとして羨ましがったり家事を半々やそれ以上にやっている男性やその奥さんに対して責めるような発言をする事で変わらないことを助長してしまう事実はある。私自身家の家事のうち料理はほぼ主としてやるんだけど、そのことを話すと一定程度なんとも言えない返しをされることがある。

男性のウソ

妊娠、出産、母乳以外で、父親が母親よりうまくできないことなどない(哺乳瓶に入れた母乳を飲ませている父親も多い)。それなのに、母親というステレオタイプと母親らしさという幻想は、父親幻想に比べて今も格段に大きい。私たちがいくら違うと言っても、母親の存在は父親よりもはるかに特別だと思われている。

アン=マリー・スローター;篠田真貴子.仕事と家庭は両立できない?(Kindleの位置No.1054-1057).NTT出版株式会社.Kindle版.

女性しかできないことは体の作りとして妊娠、出産、母乳しかないはずなのになぜか子育て全般が勝手に追加されてしまう。子どもの近くには母親がいないといけないという考え方ってどうなんだろうか。母乳に対するこだわりもよく言われるけど子育ては女性がすべきで適しているという考え方自体に不思議さを感じる必要がある。

職場のウソ

「いわゆる『女性の問題』の解決策は、女性を変えることではありませんし、女性を役員に引き上げたり、人脈作りのイベントに女性を招いたりしても、何にもなりません。組織を変えることが必要なんです。多様なスキルと長所を認め、それを目に見える形で測り、それに従って見返りを与えることが必要です*

アン=マリー・スローター;篠田真貴子.仕事と家庭は両立できない?(Kindleの位置No.1308-1311).NTT出版株式会社.Kindle版.

女性活躍を女性の力だけで成し遂げようとすること自体におかしさがあるということに同意する。女性が男性以上の努力をして成り上がったことをキャリアモデルとしたり、アファーマティブアクションも含めて管理職、役員比率を引き上げることは根本の解決にはなっていなくて配偶者への教育や会社と社会の仕組みと考え方を変えていくことを試みる必要がある。

少しずつ変わっていっているのかもしれないけどまだまだ残っている考え方に向き合う必要がある。男性主体は上の世代の考え方だと思われがちだけど、同世代や大学生からも同じような考えを聞くこともあって驚くことがある。どう向き合うのかは自分の家庭の中で起こるイベントに合わせて考え続けたいと改めて思わされる。もちろん、会社でどうするのかも。

【手に入れたきっかけ】

パートナーの友人が読んで面白かったとのことなので。

【オススメ度】

★★★★☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。