チームリーダー/マネージャーの仕事を組み立て直す『マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』(テレサ・アマビール/スティーブン・クレイマー)

これからのマネジメントの教科書になるようにも思える内容だった。マネージャーがするべきことは何かを考え直さないといけないと反省させられた。叱ることでもなく、甘やかすことでもない。

ここのところ、どうやってチームを管理したり、チームリーダーと接することをすればいいのかを考えたりすることが多い。自分とは違う考え方の人がいるのは職場として当たり前なのだけど、今までこうしてほしいということを伝えた上でなんとか回ってきた現場が回らなくなってきた。それは自分が抱えている現場だけでなく、様々な現場で起こっているようにも感じる。そんな中で世代論を用いて”最近の若者”にはこうやってコミュニケーションを取ればいいとか、問題なく働いてもらうために考え方を変えることを進めていかないといけないなどの考え方に触れることもあるのだけど、どこかしっくり来なかった。

そんな中でインナーワークライフをケアする必要があるというこの本の内容には確かにそうかもしれない。取り組んでみてもいいと思える内容になっていたので紹介させていただく。

マネージャーが何をしなければいけないのかというと、ポジティブなインナーワークライフを作り出すことであり、それはなにかというと、インナーワークライフにつながる職場での出来事を改善していく必要があるということにつながる。

ポジティブなインナーワークライフのために必要なものはなにかというと「障害」よりも「進捗」が生まれ、「阻害ファクター」よりも「触媒ファクター」が作用し、「毒素ファクター」よりも「栄養ファクター」が動いたときであるとのこと。

「進捗」を生むための「触媒ファクター」と「栄養ファクター」は何かというと下記の内容に整理されている。

触媒ファクター
・明確な目標を設定する
自分の仕事がどこに向かっているか、なぜこの仕事が重要なのかがわかっている
・自主性を与える
各人が自分の仕事に口を出す権利を持つ必要がある
・リソースを提供する
必要なリソースを与えないでいたり、アクセスを困難にすることは避けるべき
・十分な時間を与えるーしかし与えすぎてはいけない
適切な時間的プレッシャーがポジティブな思考、感情、モチベーションを保つのに最適である
・仕事をサポートする
必要な情報を提供することから、一緒にブレインストーミングをすることや、苦しんでいる仲間に力を貸すことまで
・問題を成功から学ぶ
仕事上の問題にきちんと向き合い、分析し、それを乗り越える計画を立てたり問題から学んだとき
・自由活発なアイデア交換
プロジェクトに対するアイデアがチームや組織の中で自由に議論される

栄養ファクター
・尊重
仕事への評価が公式のものであれ非公式なものであれ、人は自分の努力が認められていると尊重されていると感じる。マネジャーが部下のアイデアに真剣に耳を傾けることでも伝えることができる

・励まし
マネージャー自身の熱意が社員の仕事へのモチベーションを向上されるサポートとなる。また、仕事を見事にやり遂げる部下の力の信頼も自己肯定感をあげる
・感情的サポート
人の悲しみやフラストレーションを素直に受け止めるだけでも、ネガティブな感情を軽減させポジティブな感情を増幅させるのに大きく貢献することができる

・友好関係
仕事仲間との絆への欲求に応えるための仕事仲間の相互の信頼、理解、ときには愛情を深める行為が必要。

どんな要素が仕事の成果に影響があるのかを整理したところで、どうすればいいのかというと、まずはメンバーが日々の仕事の中でどれだけポジティブ/ネガティブなことを感じているのかを聞くことに加えて、自分の力でインナーワークライフにポジティブな要素それぞれの要素をどれだけ提供できるのかに尽きる。

そのため、メンバーの状況を日誌などの形で日々確認するとともに自分の中でチームの状況をチェックしていく必要がある。本の中にはチェックリストで確認すべきポイントが記されており、書かれている観点でのマネージャーとしての振り返りとメンバーの状況の確認が必要であると実感できる。

このチェックリストを日々つけてやるべきことを考えていくのがいいのだろう。

・進捗
今日起きたどのひとつかふたつの出来事がPJの進捗や新しい価値想像の可能性を示していたか

・障害
今日起きたどのひとつかふたつの出来事がPJの停滞や何も生まないことを示していたか

・触媒ファクター
やりがいのある仕事に対する明確な短期的・長期的目標を持っていたか
メンバーは問題を解決し、プロジェクトに当事者意識を持つのに十分な自主性を与えられていたか
メンバーは効率的に前進するのに必要なすべてのリソースを持っていたか
メッンバーはやりがいのある仕事に集中するのに十分な時間が与えられていたか
自分はメンバーが必要としていたり、メンバーから求められたサポートを提供することができたか
自分は今日の成功や問題から教訓を引き出すためにチームと話し合ったか
グループ内での活発なアイデア交換をサポートできたか

・阻害ファクター
短期的・長期的目標に混乱はなかったか
メンバーは自主性を押さえつけられすぎてはいけなかったか
メンバーは効率的に前進するのに必要なリソースを欠いていなかったか
メンバーはやりがいのある仕事に集中する時間が不足していなかったか
自分はメンバーが必要としていたり、メンバーから求められたサポートを提供することに失敗しなかったか
自分は失敗を罰したり、問題や成功から教訓やチャンスを見いだすことを怠らなかったか
自分やメンバーはプレゼンテーションやアイデアについての議論を早々に退けはしなかったか

・栄養ファクター
自分はメンバーに対して尊重を示したか
難しい挑戦に取り組むメンバーを励ましたか
個人的あるいは仕事上の問題を抱えるメンバーをサポートしたか
チーム内に個人的・職業的な友好関係や仲間意識はあるだろうか

・毒素ファクター
自分はメンバーに対して尊重の欠如を示しはしなかったか
なんらかの形でメンバーを落胆させはしなかったか
個人的あるいは仕事上の問題を抱えるメンバーの感情を無視しなかったか
チーム内に個人的・職業的な緊張関係や敵対関係はないだろうか

・インナーワークライフ
今日、部下たちのインナーワークライフについて何らかの兆候はなかっただろうか。
>仕事、チーム、マネジメント、会社に対する認識
>感情
>モチベーション
今日インナーワークライフに影響を与えかねない具体的な出来事はなかっただろうか

・行動プラン
今日と同じ触媒ファクターと栄養ファクターを強化し、今日欠けていたファクターを提供するために明日何ができるだろうか
今日特定した阻害ファクターと毒素ファクターを排除するために明日何ができるだろうか

マネージャーとして日々、ここまで内省するのは難しいようにも思うけど、マネージャーとチームメンバーの中の1人と時間をつくって考えてみるならいいかもしれない。これを1人でやらないといけないのは大変だろと思いつつ、チームの中で考える材料にするならできるかもしれないとも思える。

その上でメンバーに聞くべき日誌フォームも重めのものがあるのだけど、現場では軽くこのくらいにしないといけないかなと思ったのでアレンジしてみた。

・日付
・自分が考えるPJにおける自分の役割
・チームについて感じていること
チームは力を合わせて仕事をしているか?チームの仕事は進捗していると感じるか?

・職場環境について感じていること
仕事に対する自主性、時間的プレッシャー、自分の担当範囲の目標設定、上位者からのサポートに関して感じていることを教えて下さい。

・感情
今日感じたフラストレーションや幸せを教えて下さい。

・今日の出来事
PJ全体やチームの中で今日、心に残った出来事をひとつ簡潔に記してください。

チームの何人がその出来事に気づいていましたか?

その出来事が自分の感情、仕事および他のメンバーの仕事にどんな影響を与えたかを教えて下さい

その出来事がPJの将来にどんな影響を与える可能性があると思うかを教えて下さい。

・その他
他に共有しておきたいことがあれば何でも教えて下さい。

これを毎日すべて書いてもらうのは難しいかもしれないけど、ちょっとした会話の中で聞いてみたり、週に一度時間を取って書いてもらったうえでどうしていくのかを考えるだけでもチームは変わるかもしれない。マネジャーがここまでチームのことを考えているということを示すだけでも感情の面で良い効果を生むのかもしれないなと思えてくる。マネジャーで改めて大変だと実感しつつ、自分のマネジメントを組み立て直すヒントになる内容だった。

【手に入れたきっかけ】

話題になった本で気になったので

【オススメ度】

★★★★★

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。