価値観の違う人のことは理解できないこともあるけど、理解できることもある。『空棺の烏 八咫烏シリーズ』(阿部智里)

千葉の一般的な家庭に育ったこともあって大学に入った時に今まで会ったことのないような出会いが多かった。この人の家は確実に金持ちなんだろうなぁという人から田舎と呼ばれる地域から出てきた自分の何倍も実家を大切にする人、そして、皇族まで。

価値観が相容れないと思う人も多くて今でも仲がいい人は数えるぐらいしかいない。もう少し理解しようと試みればよかったかなと後悔することもあるけど、今につながる大学生活だったし悪くない。

こんなことを思うのは今回の八咫烏の物語の舞台が学校だったからだろう。

若宮を守ると決めた雪哉は3年間かけて近習を育てる場であるけいそういんへ行くことになる。そこでは決して無くしてはならないかじょうを与えられて切磋琢磨しながら文武の両方で自分を磨くことになる。

貴族の御曹司もいれば地方の庶民の息子もいて表向きは平等に扱われていく。ふとした時に話が出てきた斬足と呼ばれる刑罰は3本の足を持つ八咫烏らしい罰であり、残酷さを感じさせる。

雪哉が自らを高めている中で若宮は別の問題にぶち当たる。真の金烏になる条件を満たしていないと言われてしまった若宮はどうするのかが問われる。

若宮が自分について考えさせられている中、雪哉周りには千早、明智、茂丸、治真といった学友たちが現れてそれぞれとの関係性が築かれていく。階級差がある中でどんな関係性を作っていくのかを考えさせられる言葉があった。

お互いに、分からないことは分からないで構わないと思うんだ。無理に、分かった気になるよりも、その方がずっといい。理解できないってことが、自分の知らねえ世界に生きる八咫烏を馬鹿にする理由にはならねえんだと、弁えてさえいれば十分だ

本作のクライマックスでは脅威が落ち着いていた猿が現れ、若宮の自分の問題と繋げられて物語が進む。

日本神話に描かれた八咫烏を中心に描かれる物語は少しずつ人間界とつながり始めているのかもしれない。

【手に入れたきっかけ】

パートナーが買って面白かったので買い続けてた。

【オススメ度】

★★★★☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。