テレビは面白いと思ったらその人を使い倒して消耗してポイする。だから、あの人は今、みたいな番組に出てくる元芸能人の数は尽きないし、新しい人がドンドン出てくる。
オードリーの若林も「もっとたりないふたり」という番組の中で冗談めかして言っていた。「イケルと思ったら何回もやって、ポイですよ。業界の悪いクセです。」
ダンディー坂野もふなっしーもASKAもある意味消耗品。ある程度いじって、使ったらあとは放置するもの。消耗されないように立ち回れる人と消耗されても次のキャラクターで持ちこたえ続ける人、消耗されない力を持っている人が残り続けるのかもしれない。
ある時代に子どもながらに消耗され、捨てられた職業がある。超能力者。それが彼らの職業。
ユリ•ゲラーのスプーン曲げブームの後に超能力を持つ子供達が注目され、テレビに引っ張りだこになった。この本に出てくる秋山眞人、清田益章もその中の一人。
世代ではない自分にとっては遠い存在だけど、年上の人にスプーン曲げを一回でもやったことがある人が多いことからも、当時の凄さを感じる。
そんな中、何度もテレビの前でスプーンを曲げても信じられず、大槻教授に否定され続け、またスプーン曲げをしてきた人たちに焦点を当てる。テレビでドキュメンタリーとして放映された番組の取材録がまとまった一冊。
著者はオウムのドキュメンタリー、「A」を作った森達也。様々なジャンルに向き合ってきた森達也が超能力に注目した時にはどんな視点になるのか。鍵は撮り手としての森が超能力を信じるのか。
番組を見る側にとってはどちらかの立場にちゃんと立っている番組の方が分かりやすい。そんな中、森達也はどんな視点に立ってドキュメンタリーを作ってきたのかが綴られる。
信じることが難しい存在にどんな目線を向けるべきなのか、どんな視点があり得るのかを考えさせる。
加えて、異質な存在に対して自分自身が感じる恐れの正体や社会全体の奇妙な雰囲気についても言及する。自分自身が社会の一員であることを自覚した上で社会について考える。
超能力とは何かを考えると共に、超能力者に対して社会がどう振舞ってきたのかを考える。それは異質なものにどう向き合うべきかという問いにつながる。
【引用】
人の営みや種々の事象は、両端だけで構成されるはずはない。その中間にある葛藤や煩悶、曖昧さや中途半端なものを、無価値して切り捨てる傾向にある今の世相に対しての危惧は、僕の中で日々濃密になっている。
【引用】
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小檜山 歩
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