茶臼山から家康が布陣する平野まで約一里。
この一里を真田は走り抜ける。
そのまばゆい疾走は戦いと平和、二つの世のあわいを限る画期となるとともに、この島国の民が永遠に忘れえぬ一筋の流れ星となるだろう。
困難に立ち向かうとき、理不尽に奮い立つとき、震えながら勇気を振り絞るとき、人々は繰り返し繰り返し、この光跡を心に思い描き、闇夜に流星を見たら必ずそうなるように、無数の子が願いをその一瞬の輝きの中に掲げるものに違いなかった。
大阪夏の陣を表した美しい言葉。外堀を埋められて玉砕を覚悟した武士たちが日の本一の兵と呼ばれるようになった戦いをこう表している。
徳川が天下を盤石にした戦いというよりも真田幸村の戦いとして語られることの多い大阪冬の陣と夏の陣。この戦いへとつながる物語を一人の男を中心に描く。
史実を元にした武田から真田、そして一人の小姓へと物語がつながっていく。
少し具体的な性描写もあるBLと戦国が重なる。織田信長と森蘭丸の関係や武田信玄のラブレターで知られるような関係が他にもあったというのは当たり前でアニメのキャラクターのBLものよりもリアリティがある。
ただ、BL、もっと具体的にいうと男色に関わる記述は少なくて真田幸村(信繁)の父である真田昌幸にまつわる2つの関係が語られながら戦国最後の戦いと深く描く試みになっている。
一風変わったBL入りの歴史小説を読みたい人にはおすすめできる。出てきた言葉の中で冒頭に取り上げたものとは別にもう1つ気になるものがあった。
恐らく、彼らは、これまでの人生で心底から喜んだり、悲しんだり、憤ったりしたことがないのだろう。身震いしたことがないのだろう。そうでなくては、何の罪もない、その顔を見るだけで自然と笑みのこぼれるような子供を切り捨てることがどうして出来るだろうか。
感情を強くもたない人のえげつない行動に投げかけるこの言葉は今の時代にもつながっている気がする。
【手に入れたきっかけ】
「本が好き!」の献本キャンペーンで入手!
【オススメ度】
★★★☆☆
小檜山 歩
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