人事のトレンドに関してもう少し勉強しないといけないとなった時に会社で勧められた本の中の1冊がこの本。 見た目がお固くて自分で手は取らないだろうけど、勧められたし、読んでみようと思って買ったら思ってた以上に良さそうな本なので読み解いていく。
総論のあとに有識者がテーマごと執筆している内容がまとまっている本になっており、まずは総論として「変革迫られる人材マネジメントと人事部」というこれまでの人事の流れを振り返ったうえでこれからを考える全体感が語られている最初の文章から取り上げる。
「戦略人事」としてまとめることができる人事部の機能の中でビジネスと周辺環境の成長・変化に伴ってトレンドが変化してきた流れを整理した上でこれからの人事が取り組むべき4つのキーワードを紹介している。
戦略人事・人材マネジメントの流れ
これからの戦略人事を考える前に今までの日本の人材マネジメントがまとめられている。1960年代の高度経済成長期にはとにかく労働力が必要であり、それに答えられるだけの人数が確保できたこともあり、現場労働者を新卒一括採用し、どんな場所でも同じように働いてる従業員を供給するとともに右肩に成長を続けることによる従業員に対する経営層からの利益配分をサポートすることもあった。
バブル経済が崩壊した2000年代からはコストカットの要請が経営層からされることになり、一律給与を上げ続けることができないことから成果主義の評価や給料を導入、派遣社員の活用により人件費を増やさないことや従業員が人の時にだけ労働力を供給できるような仕組みを整えてきた。
労働力が減少し、従業員の意識が変わっている昨今は新たな対応が必要ということになってきたというところでこれからの人材マネジメント・人事部のトレンドへと進んでいく。
これからの人材マネジメント・人事部のトレンド
紹介されているこれからの人事部のトレンドは「全員対象のタレントマネジメント」、「じ人事評価から個別フィードバックへ」、「個の尊重」、「組織力を高める組織開発」の4つであり、それぞれが現在の労働環境を反映している。
優秀層を選抜し活用することで経営人材を確保することでビジネスを回すことができると考えられてきたトレンドが変わろうとしているのが「全員対象のタレントマネジメント」である。大手企業がこぞって実施する「選抜型研修」はそれまで評価が高かった従業員を選抜し次世代マネジメント層として育ててきた。この仕組み自体は継続されるのかもしれないが、そうならなかった従業員の再チャレンジを支援する仕組みや、そもそも落ちこぼれ社員をどのように育成していくのかが問われている。放っといても会社を辞めずにある程度のアウトプットを続けてくれるという期待に応えない従業員がいたときに「全員対象のタレントマネジメント」が必要になる。
評価制度に対しては年に1度か2度のランク分けをすることによって賞与や昇格が決まってくるような”ありがちな”評価の仕組みは見直していかないといけない。本来、評価は個々の従業員の成長を促すものでなければならないはずが、その効果を発揮できていないという現状があり、フィードバックを常日頃からすることで成長を促すことが評価には必要になってくる。
雇用形態の多様化や個人が仕事に対して求めることが様々になっている中でそれぞれの従業員の意思を尊重するための仕組みとして「個の尊重」が必要になっている。また、多様な価値観が職場に同居することやリモートワークによって対面のコミュニケーションによって勝手にそこそこチームが機能してきたこれまでの職場ではなくなっていることから「組織力を高める組織開発」が必要になってきている。
これらのトレンドが紹介されており、現場で進んでいる内容・現場の悩みの通りだと感じるとともに具体的な施策を考えてみた。
これからの人材マネジメント・人事部施策例
全員対象のタレントマネジメント
「全員対象のタレントマネジメント」はここ10年のトレンドであるタレントマネジメントシステムの導入と活用が施策としてあげられる。「タレントマネジメントシステム」と一口に言っても様々な役割があり、会社のニーズに対してもどこから始めるのがいいのかということを考えなければいけないのだが、基本的には「従業員の能力・スキル・キャリア把握」がスタートにあり、「能力・スキル向上のフォロー」と「明確した役割/要件に基づく人材配置」によって組織全体の能力を活用・向上するのがタレントマネジメントの基本的な考え方といっても差し支えはない。
スキル・能力・キャリアなどの従業員のプロファイルを登録し、その能力を向上するための仕組みを整えて人材配置はプロファイルのデータを基に実施することができている会社は実際に少ない事実があり、小さい会社であれば仕組みを考えて手運用で実行することもできるだろうし、大きい会社であればシステムを導入することになる。
タレントマネジメントとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ
https://www.hrpro.co.jp/glossary_detail.php?id=17
人事評価から個別フィードバックへ
「人事評価から個別フィードバックへ」はここ5年ぐらい話題になっている1 on 1の仕組みと組み合わせて評価のFBと今後のやるべきことを考えることをリーダーとメンバーの関係の中で実施するルールと仕組みが必要になっている。 評価面談を毎月実施することも施策としてはあり得るが、評価をするということに重きを置くのではなく、仕事に対するフィードバックを頻繁に実施するということが大切だと考えると目標設定を実施したリーダーと現状の目標への達成度を確認し、これからどうしていくのかを考える時間を取ることが大切で、それをフォローする仕組みの導入が必要となる。
メンバーのためでなく自分のためにメンバーとの時間を『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング』(世古詞一)
個の尊重
「個の尊重」は人事部が従業員に提供するサービスが全体最適を考慮したものではなく、様々なサービスを提供した上で従業員が自分に合った制度のもと働くことが大切という考え方になるため、従業員のニーズの頻繁な把握が必要であり、アンケートを日常的に取る仕組みを備えた上で人事の作業時間を増やすことなく制度やメニューを増やす仕組みを考えていかないといけない。
労働時間や働き方、給与体系を従業員が自由に選ぶことができて変更も容易である仕組みが整った会社が人を確保できるようになっていく。人事厚生サービスや個人のニーズと人事制度をマッチングするサポートをアウトソースすることや分かりやすくメニューを配置した上で従業員自身が自分から制度の手続きをするような仕組みが必要になる。人事の考え方として従業員が人事について分からないことは手取り足取りサポートしてあげるという感覚が強い会社も多いが、自立的な従業員になってもらう教育と合わせて多様なサポートをするという両輪で進めないと人事がパンクするので注意が必要である。
初公開! サイボウズの自由すぎる働き方はこんなやり方で管理されていた | サイボウズ式
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005338.html
組織力を高める組織開発
最後の「組織力を高める組織開発」はこれまで各チームのマネージャーに任せていた組織やチームを作ることについて人事がサポートするということが求められていく。多様な人材を確保・活用していくというこれからのチームに対する要請には組織内でコミュニケーションを取ってフォローをすることを管理職に丸投げすることでは応えられなくなってしまう危険性が高い。人事が制度と仕組みの両側面で各チームをフォローしていくことが必要ということを考えないといけない。
「戦略人事を実践するための4つの人事機能」のうちの「人材管理エキスパート」がその役割を担うのかもしれないが、具体的に何をしなければならないのかを考えていく必要がある。マネージャーに代わって仕事に対する悩みや組織に対する改善案や不満を聞いて組織のあり方をまとめてマネージャーと考えていく役割であったり、とにかくマネージャーがメンバーに伝えたい情報を浸透させるサポートをすることだったりなのだろう。いわゆる”人事マン”ではなく、人事がビジネスに向き合いサポートすることが必要だと言われ続けているが、まだ道半ばであり、これができる人事が重宝されていくだろうし、そんな人事を育てていかないといけない。
HRBPの役割とは?DeNAとDMM.comのHRBPから見る「攻めの人事」 | | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE
https://hrnote.jp/contents/hrbp-semenojinji-20201007/
これからの人事を考えるのに役に立ちそうな内容が詰まってそうなので何回かに分けて内容紹介していく。
小檜山 歩
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