自分なりタイトルは「未来の小便小僧と世界からの報告」 『番犬は庭を守る』/岩井 俊二

(ネットの献本サービスで頂いた一冊です)
【ポイント】
1、自分なりタイトルは「未来の小便小僧と世界からの報告」
2,持たざるものは退屈に慣れ、番犬になっていく。救いをどこに見出せばいいのかが分からない。
3,原子力発電の恐ろしさを物語だからこそのえげつなさで伝えている。

原発のゴミは何百年も放射能を出し続ける。こんなにたくさんある原発が廃炉になった後、その場所は本当に安全に管理できるのか。
卑弥呼、聖徳太子、平清盛、源義経、織田信長、徳川家康、ペリー、伊藤博文、昭和天皇。この歴史よりも更に長い間、原子力発電で生まれるゴミは放射能を出し続ける。原子力発電はそんな発電方法なのです。そして、事故の可能性がゼロではないことは言わずもがな。
この本は、廃炉になった後の原発で、事故が多発し、管理区域が設定されるも、富の格差で、危険な区域に住み、働かざるを得なくなった人と、そうでない人が居る世界、モロに性器へ放射能の影響が及び、精子の質によって富の差が生まれる社会を描いている。
えげつないぐらいに性器と性の差を描く、原発のリスクを物語で浮かび上がらせようとする試みである。
そして、持たざるものは退屈に慣れ、番犬になっていく。救いをどこに見出せばいいのかが分からない。今の世界が救いなのかもしれない。ただ、退屈に満たされた世界にしないために自分達が何が出来るのか、何もせず、自分達の代は問題ないからといってそのままにしておくのも1つの行動。それは認める。ただ、自分達の代には問題ないから良いんだ、と思う人にこそ、読んで欲しい1冊かもしれない。
「鯨はかつて世界の燃料だった。遠い昔、人類が…」という書き出しで、この本の物語は始まる。今は鯨が燃料ではない時代。それを自分達は何もせず、受け入れている。このことを物語だからこそのえげつなさで伝えている。未来からのメッセージなのかもしれない物語。
ただ、極限まで心が動いたとはいえないので、☆4つ。
自分なりタイトルは「未来の小便小僧と世界からの報告」。

番犬は庭を守る
岩井 俊二
幻冬舎 ( 2012-01-27 )
ISBN: 9784344021235

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。