プロレスをこう描いてしまうのか。
あるプロレス団体の象徴であるレスラーが大きな大会、試合中のリング上、原因不明で亡くなった。その真相を新入りレスラー、山田聡が追っていく。
プロレス=強さだと信じている主人公は、事件の謎に迫っていくとともに、プロレスとは何かということについても考えていく。プロレスの正体やプロレスラーの想いなど、事件を解決するために必要な要素だった。しかし、純粋な気持ちだけでプロレスをやっている人間には把握することが出来ない世界がプロレスにはある。一般の人には理解することが難しい部分があるからこそ、プロレスが存在し、このミステリーが成り立つ。
残念なのは、参考文献として挙げた資料や文章から、筆者がプロレスをガチンコ勝負か台本・やらせ・エンタメの二極でしか見ていないように感じてしまったこと。プロレスファンとしてはこの二極を超えたところにプロレスがあるんだと言いたいんだけど、世間はそれを許してくれないことを再確認した。読み手はこのガチか台本かでプロレスというものを捉えるんだろう。プロレスファンとしては少し悲しい。
ミステリーとしてスッキリしているとは言いがたい。あっと驚くどんでん返しがあるわけでもなく、考えもつかないトリックがあるわけでもない。ただ、主人公のプロレスや周りの人に対する真っ直ぐさには清々しさを感じ、読む人を引きつける。プロレスが好きな人にとってもプロレスミステリーとして内容はどうであれ、プロレスに関わる本として気持ちは入り込む。主人公の誠実さに乗せられ、読みきった1冊。
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小檜山 歩
コンサルタント : 日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
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