去年から話題になっていた古代ローマの温泉技師の物語。古代ローマと日本をお湯の中を通じて往復しながら、古代ローマに現代日本の風呂に関するものを採用していく物語。最初は、読み切りのような形で1つ1つの物語が短かった。そのまま行き詰まるのかという予想がされていたけど、3巻まできた。
今までの2冊と大きく異なる点を自分なりに考えてみた。一番変わったのは、1つのテーマについて長く描かれている。1巻や2巻はフルーツ牛乳や温泉卵、ウォシュレット、温泉の効能などシンプルなものが多かった。しかし、今回は「温泉街の文化」や「豪華な温泉ではなく・・・」など、描くのが難しい抽象的なものに主眼を置いている。わかりやすいものだけだと、読み手は飽きていってしまう。でも、こうやってテーマを広い物にしていくことはこのような狭いテーマの漫画が長続きするのに必要なことなんだろう。それを兼ね備えている。また、古代ローマを舞台をしていたが、物語色の薄かった内容が古代ローマの政治も描きはじめることで、読み応えを持たせ始めている。古代ローマを学びたいけど取っ付きにくいという人も読むといいかもしれない。古代ローマの空気感を上手く表しているような気がする。
筆者が1つの物語が終わったあとに、毎回書くコラムも面白いけど、温泉街をテーマにした物語の後のコラムに共感した。温泉街でのお買い物について、「お湯でふやかされた脳細胞のみが反応する、体裁を一切無視した欲望も、人として大切だと思います」(P81)として「でっかい通行手形のキーホルダー」や「ペナント」を購入して「自分の不可思議な衝動」について考え込むことがあった。と記している。
よく分かる。自分は衝動買いが多い。特にどこかに出かけた旅行気分の時に。温泉街では食べ物を衝動買いしてしまう。だって、おいしい。300円の豚汁とか、ぜったいボッタクリなのに買ってしまう。そんなことを思いながら読み返した。
この漫画の進化に☆4つ。
小檜山 歩
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