世代論が嫌いな筆者は嫌がるかもしれないけど、23才の自分にとっては日本にいる同世代の著者が書いたこれからの日本を生きるための考え方の羅針盤のような本。
なぜ、ここまで言えるのかというと、この書き手の人を信頼しているからだと思う。1作目の『困ってるひと』を読んで、この人の本は読んでいこうと思えた自分がいた。
原因不明の難病にかかった、女子大生が難病と共に生きてきたのかについて、今までにないような書き方でまとめたのが『困ってるひと』という本。引きつけられ、2作目も買ってみました。
今作は『困ってるひと』を書いた以降に様々なところで書き、語ったことをまとめた1作。 糸井さんとのざっくばらんな対談から始まり、若者について、難病について、障がい者の話へと理論と現実が交じり合いながら語られていく。 大野さん自身が難病と闘っているからこそ、この本は医療や福祉の内容に触れることが多い。
まず、この内容を自分に関係あると思うことから始めたい。福島から出てきた大学院生が突然難病にかかり、ミャンマー難民を取材する立場から東京の中で難民生活を送るようになった。この難民生活はどんな人に降り掛かってくるかはわからない。自分に関係ないものとして考えるのではなく、関係あるものとして読んでいかされる。それだけの力がある。
社会や医療を考える際に頭に入れておきたい言葉がたくさんある。学者さんとの対話もいくつか含まれているがゆえ、『困ってるひと』よりも読むのに少し頭を使う必要がある。大野さんがもともと院生だったからこそ、書くことができた内容だと思う。 『困ってるひと』のちょっと学術的な本。オススメです!
【引用集】
人が人を救ったりはできない(66)
わたしが世代論に最終的に何も結実ももたらさないと思うのは、結局は「敵さがし」、「悪者さがし」だから(103)
お互いを批判するんじゃなくて、それぞれの領域でそれぞれができることをやっていることを尊重し合うというのはある意味「今時の若者」的(113)
良い本を読むのは、不条理の真っただ中にいるときに、一つの生きる技法でもあると私は思うんです。(170)
田舎暮らし、というのは、都会の人にしかできない。(179)
小檜山 歩
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