この本で一番心に刻まれた文章がノンフィクション作家の石井光太さんの「被災地の遺体安置所で「死」について考えた」というもの。そこには復興への希望やがんばりに溢れている。震災報道には現れないけど、実際に起こっている「死」という現象について書き留められている。現地の
P61 女の人が、「この下に私の子供が埋まっているから拾い上げてください」と泣き叫んでいたり、遺体を抱えた人が、「安置所に持って行きたいけれど持っていけない」と言っていたり、車を開けたら死体がごろごろと出てきて、「どうすればいいんだ」と叫ぶ人がいたり。そういうことが日常のようにあった。
というものを読んでいても現実に起こっていたのかが信じられない映画のような描写や
P65 遺体が大量に並べられている安置所では、人間がまるでマネキンのようになっているのですが、生きている人たちの遺体に向き合う真摯な姿勢は、すごい、と思いました。
という目の当たりにした本人しか書けない記述があった。人間がマネキンになってしまう。自分自身、葬式で見た死者の顔はマネキンとは思わなかった。心があった気がした。でも、被災地ではそう思えない状況があったんだと思う。
バイト先に電車に揺られて2時間かけて向かっている「生」きている自分を率直に認めたいと思った。自分は生きているんだと。
そして、この文章を書いた石井光太さんの本をもっと読みたい。この人を通して社会を見つめ、自分を考え、「生」きていきたいから。綺麗ごとかもしれないけど、そんな風に思わせる力がこの文章にはある。
「生」きているなら読んで欲しい。秋には3.11について現地へ行って書いたことを刊行するらしい。絶対買う。忘れず、考え、「生」きるために。
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小檜山 歩
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