心のどこかで許容範囲を設定していてそれを越えてしまったことに対して怒りをぶつけることがある。その怒りをぶつけることが論理的には間違っているとわかっていた時に起こることは理解しようとすることではなく”いいんじゃない”と受容したふりをして距離を置くことなのかもしれないと思わせる。
”いいんじゃない”で済ますことが厳しくなってきている現実があるようにも思えるテーマを扱っている。海外で暮らしている弟が亡くなった折口 弥一(おりくち やいち)のもとへ弟の夫と名乗るマイク・フラナガンがやってきて自分のことを「お兄さん」と呼ぶところから話は始まる。
弟との約束でやってきたマイクは兄とコミュニケーションを取ろうとしているが、主人公の弥一は複雑な感情を持ってしまう。日常でゲイと触れることの少ない、いわゆる”一般的な”日本人の代表として投影される弥一は自分の神であるように読み手には思わせる。
日常生活の中での弥一ははっきりとゲイの弟に対して嫌悪感を抱くのではなく、自分とは違うけど認めなくてはいけない、でも、葛藤を持っている人間として描かれる。そのうえで、家族としてのコミュニケーションがどうあるべきかを通じて読み手の心を突いてくる深みがあるマンガに仕上がっている。
この本を読むと”いいんじゃない”ではいけない一歩先に踏み込む必要性を改めて感じさせてくれる。
【手に入れたきっかけ】
Kindleの週替りまとめ買いキャンペーンで気になったので
【オススメ度】
★★★★☆
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小檜山 歩
コンサルタント : 日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
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