DDTの歴史を踏まえた上で区切りあり、次に進む物語もあった相変わらずのおもちゃ箱 DDT「Judgement2022」

文化系プロレスとして日本のプロレス界の中で成長してナンバー2の位置に食い込んできているサイバーエージェントグループのプロレスのひとつの団体であるDDTが同じグループの東京女子プロレスの両国国技館興行の翌日に同じ場所で興行を行った。グループであることの強みが出ていて舞台装置は同じものを使っているようで、前日の東京女子の余韻はありつつ配信で見ることにしました。

LiLiCoの引退試合は最も深い物語でDDTの真骨頂を見せた

タレントからプロレスラーとしてDDTで戦い、ゲスト参戦ながら存在感を見せていたLiLiCoが転倒して左足の膝蓋骨を骨折したことで引退をすることを決意し、後楽園ホールで引退表明のうえ、両国国技館で引退試合を行うことになった。相手にはDDTでなんとも言えないけどとんでもない存在感を持つフェロモンズであり、タッグパートナーには副社長である彰人だけでなく、歌謡グループ純烈のメンバーである小田井涼平さんが入るという情報量の多いカードとなっていた。

試合は怪我を持っているLiLiCoの奮闘もあり、フェロモンズのとんでもない攻撃もあり、エトピリカが流れながらのスローモーションもあり、純烈のコンサートもありでこの興行で一番DDTらしい試合だったのかもしれない。これはプロレスではないという人がいるのかもしれないけど一人のLiLiCoのプロレスラーとしての生き様を引き立て、見る人を引き付けたのだからこれもプロレスなんだろう。最後は攻撃をしたのだけど男色ディーノからの贈る言葉もあったようで印象的だった。

DDT女子プロが伸び、クリストファー・ダニエルズのメッセージも

他にも人と人のストーリーはリング上に現れる試合は多く、 DDT に入れなかった雪妃真矢と DDT で女子プロレスラーとしてデビューした赤井沙希のシングルマッチは女子プロレスを DDTグループとして更に力を入れていくことを感じさせるようなカードであり試合の品質だった。沙希様として東京女子プロレスに参戦している赤井沙希が赤井沙希として東京女子に久しぶりに参戦する流れもあり、雪妃真矢も来るのではないかということで東京女子プロレスもまた一つ大きなうねりが起こるのかもしれないと感じさせる。

DDT 出身であるケニー・オメガも創設メンバーの一人であり、アメリカで2番目に大きなプロレスの団体であるAEWとの提携が今まで以上に進めることを日本でも活躍したクリストファー・ダニエルズがビデオメッセージで伝えるのは昔からのプロレスファンも喜ばせるような演出になっていて、いろんな側面を見せていく DDT がたまらない。

試合も満足で全体のバランスがよいのが魅力

DDTの興行は全てがストロングスタイルのプロレスではなく、エンタメもありハードコアもあり、癒し系の試合もありというのが見ている人を疲れさせない工夫なのかもしれないと思えてきた。ずっとステーキを食べさせられるような興行もあって見ていて疲れてしまうこともあるのだけど、ちょっと肩の力を抜いてみることができる試合だったり、王道のバチバチのプロレスとは違ったハードコアやタックの妙を生かした試合などいろんな試合がごちゃまぜになっていることで興行全体として見る人を惹きつけることができているように映る。イベント全体としての完成度の高さはプロレス界随一なのかもしれないと感じる興行だった。

だからこそメインは重みのあるプロレスを見せないといけないという圧が高まるのだけど、竹下幸之介と遠藤哲哉はその期待に対して十分に応える試合を見せた。オーソドックスなリング上での攻防から始まり、場外での危険技はエグくてエプロンでのカナディアンデストロイヤーは驚かされた。タフな試合の中でこれまで戦ってきた歴史をぶつけた遠藤がベルトを奪い、世界一のプロレスラになるという竹下は高校生の頃にデビューしたDDTの戦いから次の戦いへ進むことを示唆しており（後日、AEWへの長期遠征が発表される）、新しい DDTがここから始まることを期待する試合になっていてワクワクする。