経済学的には正規労働者を守っている制度を壊す必要があると。経済学的にはそうかもだけど…『働き方改革の経済学』(八代 尚宏)

 

実際にできるかどうかは別の話だよなぁ。でも、経済学的にはそうすべきと提示するのは政策立案者に向ける論だからなんでしょう。

日本にあるのは「正規労働問題」だというところからお話は始まる。ここ最近、同一労働同一賃金が叫ばれ始めて多くの会社の人事さんは賃金制度をどうするのかを考え直し始めている。非正規雇用の方の扱いをどうするかを考えることや話題にあがることが多い中で、経済学的に分析した筆者は問題の本質を正社員の年功賃金にあると主張する。

雇用者と被雇用者の間の労使対立はほぼなくなってきている一方で正規労働者と非正規雇用の間の労労対立が顕在化していることや専業主婦付き世帯主が少数化している背景に触れたうえで政府が取るべき政策を経済学の視点から考える。

解雇の金銭解決ルール、残業依存の改革や定年退職制度を見直して流動性をあげるべきというのは確かにそのとおりなんだけど、現場の人事さんのそうはいっても難しいんですという声が聞こえてきそう。だからこその、政府への提言なんだなというのは納得します。著者自身が官僚から学問の世界へ行った人であるというバックグラウンドが影響してるのでしょう。

今年の前半で話題にあがった高度プロフェッショナル制度について肯定的だったりする。詳細は読んでほしいんだけど、政策立案の参考にする内容であって個々の企業でこれをやるのは難しいなぁと思ってしまった。

後半には評価制度を一方的ではなくて双方的で不満がある場合の扱いなどをこうすべきという話だったり、何年も前から流行りのキーワードとして出てきているHRBP(HRビジネスパートナー)についても触れられていて会社として取り組める内容もある。

でも、基本的には筆者自身が政策立案者であったこともあって政府がどうすべきかを経済学の視点から考えた本の色合いが強いかな。

【手に入れたきっかけ】

働き方改革の本を読んでみようということもあり、私が大学生の頃に1回ぐらいは授業を取った先生の本ってこともあって読んでみた。

【オススメ度】

★★★☆☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。