6月号も届いているけど、まだ、見直していなかった5月号。3,11の震災後、初のクーリエ・ジャポンだった。なので、一番のテーマは「いま届けたい世界からのエール「がんばれ!」日本は必ず復活する」だった。他に「中国人はなぜ日本人より英語が出来るのか」や「超一流のトップが語る「私はこんな人材」が欲しい」などビジネス色が強いような気がしたけど、流石に災害における各国の反応の記事については、とてもクーリエらしくてイイ。
「英国で離婚した5000人を対象に行った調査で、「離婚理由がフェイスブック上のコメントや写真に関係がある」と答えた人の割合」が19,7%(P15)
というのに驚いた次のページから震災特集が始まる。様々な国の応援メッセージとその日本語訳が記されており、次のページから、それぞれの国の記事を紹介している。この特集にはいろんな意味がある。1ヶ月後に見直して、それを改めて感じる。1ヶ月前には優しかった海外メディアは見方を変えていった。それが次月のクーリエでいくつか紹介されているので、この号の価値を改めて感じた。特にそれを思った記事がP29、フランスの「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」の記事。「日本の底力を試す「4つの変化」」として予想されていた変化を並べていた。でも、今、読むと「でも・・・」と思う。
P29 前原外相を辞任に追い込んだあまりにくだらない告発とその方法は落胆させられるものだった。
天災がもたらした事態の重さは、政治家や、ささいな出来事を書き立てるのが常に日本メディアシステムに、分別ある行動を取らせるだろう。
メディアは変わっていないのではないか。スキャンダルで辞任させるような動きはなくなったが、逆に、東京電力や政府などの権力者のほころびに対して無批判になっていないか。それを一番示しているのが、次の事項について
P29 今後は原発の安全性を疑う世論が国内外で高まるだろう
P29 日本は技術革新と科学を推進する取り組みに力を注ぎ、エネルギー問題や環境問題の解決に向けて、実用的な応用ができるように務めるべきだ。
エネルギー政策や原子力発電の再考について、政府は触れない。そして、マスメディアも触れない。これこそが、メディアが変わっていない証拠ではないだろうか。
一番好きな連載である「町山智浩のUSニュースの番犬」ではアメリカにおけるメディアの震災への対応について、紹介している。
P70 あまりの産業にキャスターもコメントのしようがなかった。
CNNは津波の映像をYouTubeに上げた。視聴数は6000万を超え、オバマ大統領の勝利演説の記録を破った。
とし、レディー・ガガやチャーリー・シーンの寄付の動きがある。反対に無神経なツイートについても紹介している。
元ギャングのラッパー50セントや過激アニメのプロデューサー・アレック・サルキン、ギルバートゴッドフリードなどのツイートを紹介している。筆者は
P70 彼らは、言ってはいけないことを言うのを仕事にしてきた人々だが、さすがに今回はたちまち人々の怒りのリツイートが集中して謝罪に追い込まれた。ゴッドフリードはアフラックから契約を打ち切られた。
それこそ、TPOの見極めは必要だし、「がんばろう」と言うだけでは、ダメだけど、震災直後の笑いの難しさについて無神経になったことによってこれらの人は批判された。
森巣博のコラムでは、その震災に関する内容とは別に(多分、震災前に原稿を提出したから、もしくは、あえてなのかもしれない)1年前のこととして消え去って官房機密費の問題について書いている。最後の記述が分かりやすい上、いろんな核心を突いていると思うので引用する
P105 民主主義の根幹にかかわる「官房機密費マスコミ汚染」を報道してきたのは、主に週刊誌であった点は、前述した。とりわけ「週刊ポスト」誌は、「上杉隆と本紙取材班」が、12回にわたりこの問題を集中的に追求している。本稿も、その記事群を参考にさせていただいた。
その「週刊ポスト」が取材依頼をした時事通信の田崎史郎・解説委員長は、
「不愉快な問い合わせをしてくる出版社とはお付き合いしかねる」
と取材を拒否したようです(「週刊ポスト」10年8月20・27日合併号)
ちょっとおおおううう、これ、おかしいんじゃない?
時事通信の取材って、取材される側が不愉快と感じるだろうことは訊か(問い合わせ)ないの?都合のいいことばかり、訊いてくるのね。それでも、ジャーナリズムだったんだあああ。
ジャーナリズムは「国民の知る権利」を代行する。それゆえ、特権が与えられている。失礼だったり不快にさせる質問だって、しなくちゃならんときは、嫌でもする。それで高い給料をいただいているんじゃないの。
大通信社の解説委員長が、語るに落ちた、と言うべきか。
それとも日本の大手メディアの正体見たり、と言うべきか。ああ、情けない、情けない。
この官房機密費の問題について、本当に大手マスメディアは疑問を呈さない。これが大手マスメディアがジャーナリズムを目指しながらも、会社であることの限界を表しているんだろう。
P134からは各国のアフガン駐留兵士が食べている食事を写真でとって掲載している。見てて、楽しいし、こんなものを食べているのか。という驚きも感じる特集。
震災における外国の記事紹介においては、これぞクーリエという強みが発揮された号であったと思う。その中で、震災以外についての記事も興味深い。でも、「中国・韓国の英語事情」や「革新的企業」「人材について」など、やっぱりビジネス誌の色がかなり入っているのが残念。その色が薄まれば完璧なんだけど、それがあることによって☆4つ。
小檜山 歩
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