ねらいは「世界の食料、日本の農業、そして毎日の食生活のつながりを、授業形式でわかりやすく伝えること」(P10)。そんな5コマの授業を始めよう。
日本の農業がヤバイ、自給率が下がっている、外国から食べ物が入って来なくなったら…こんな話を、君たちもたま~に目にしたり、耳にしたりすることがあるだろう。この本はそんな断片的なニュースは入ってくるけど、農業の全体図は分からない君たちへのオススメの本だ。5つの時間割に分かれていて、筆者で名古屋大学農学部教授の生源寺眞一先生が授業をしてくれるんだ。
一限目:食糧危機は本当にやってくるのか?
二限目:「先進国=工業国、途上国=農業国」は本当か?
三限目:自給率で食糧事情は本当にわかるのか?
四限目:土地に恵まれない日本の農業は本当に弱いのか?
五限目:食料は安価な外国産に任せて本当によいのか?(目次より)
5時間といえば、小学校4年生ぐらいだろうか。ただ、この内容は小学生には難しいかもしれない。ただ、筆者が読者として想定した、「高校生から大学低学年」(P202)の君たちには読んだら理解できる内容だと思うんだ。
君たちの周りで騒がれている食糧危機のお話(一限目)から、先進国と途上国間のお話(二限目)。よく、指標として君たちが目にする自給率をひも解き(三限目)、やっと日本の農業に焦点を当て(四限目)、外国の農業も考えつつ(五限目)、最後に、生源寺先生が持っている日本の農業と農村についての熱い思いが君たちへと語られるんだ。
農業としてたまにちょっと調べる時に、君たちの手元に置いて損はない一冊だよ。
最後に読んでいて目に留まった一節を引用させてもらおう。
「真冬に赤い温室トマトが食卓に並ぶ暮らしは、本当に幸せなことなんだろうか。もともと草食性の動物である牛に大量の穀物を与えている現代の畜産は、どこか不自然ではないか。ということは、その乳や肉をおいしくいただいている私たちの食生活にも不自然なところがありはしないか」(P134)
<本の文章が生徒へのお語り口調だったので、真似をしてみました。気分を害された方にはお詫び申し上げます>
小檜山 歩
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