オウムに関するジャーナリズムについて江川紹子さんを通じて考える~森達也「A3」から思った事 Part7~

いろいろ書きたい事が多すぎてこの更新が遅くなった。
それでは、オウムについて、第7弾。意味が分からない人は「電車の中で書きなぐった文」
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-359.htmlまで。
先に書いておくが、こひやまは江川さんと面識もないし、うらみを持ってもいない。むしろ、検察や警察などの公権力に対して真っ向から意見を言うジャーナリストとして見習いたいと思う。が、オウムという問題に関する江川さんの意見には賛同できない。
麻原氏の裁判打ち切りの翌日に出た東京新聞紙面に掲載された江川さんのコメント
p271 「何ら違和感のない妥当な決定。弁護側が控訴趣意書を出さないのは、引き延ばし以外の何ものでもない。控訴審でも、麻原被告が真相を話す可能性は1ミリも期待できず、国民の期待に応える判断だ。」

まず、弁護側の控訴趣意書に関わる問題については本を読んで欲しい。が、一番気になったのは「国民の期待に応える判断だ」ということ。
裁判所は国民に応える判断を行うところなのか。こひやまは違うと思う。法律に従って、判決を出すところだと思う。司法が国民の要望を聞き入れ、判決を出すことは法治国家でなくなるのではないのだろうか。

そして、他の箇所。
P205 「江川紹子が自らのブログで。書店でたまたまオウム出版の本を見つけて、驚きあきれ、すぐに店主に抗議して本をすべて店頭から撤去させたということを書いていた。まあ確かに、とは思う。それがまっとうなのだろうとも思う。でもなんとなく違和感がある。ここに反ナチ法を持ち出すのは勘違いかもしれないが、でも何かがバクを起こしているような感覚がある」

このブログの記事は見つけられなかった。でも、事実だとしたら、こひやまはオウム出版の本を撤去する事に反対だ。なぜ、撤去しないといけないのか。なぜ、読んでいろいろ考えたりしないのか。あれだけの死者を出した事件の原因となった人が書いた本を読む価値はあるんじゃないのか。ヒトラーの言葉が書いてある本は読める。ムッソリーニの言葉が書いてある本は読める。なぜ、オウム出版の本はダメなのか。明確な理由が分からない。
江川さんのブログで他のエントリーでオウムについて書いていた。
「国民が裁判所に期待しているのは、「真相」の解明、有実の者に対する適正な処罰、そしてそれらの手続きが迅速に行われることだろう。新たな「真相」が出てくる期待ができない以上、裁判をこれ以上遅滞させず、少しでも早く適正な結論をえるべく努めるのは、裁判所として当然ではないだろうか。」
「共犯者同士で、それぞれの役割に関する言い分が違うのは、ちょっちゅうだ。一方の発言に自己保身を感じることもあるが、それぞれの中で異なる記憶が定着しており、どちらも自分にとっての「真相」を語っているのだろうな、と思えることもある。
 そういう食い違いを見てきて、私はだんだんこう思うようになった。「真相」とは、唯一絶対のものではなく、事件に関わった人の数ほど「真相」があるのではないか。しかも、時期によって「真相」は変化するのかもしれない、と。
 これまでの多くのオウム裁判で、検察側・弁護側双方から光が当てられてきた。私以外にも、何人もの人が傍聴記や手記を書き、発言をしている。法廷外での独自取材を行った記事や番組もあった。多くの立場から見た「真相」が語られ、呈示されてきた。そういうものを通して、私たちは事件を複眼的に見る材料をたくさん得た。
 今必要なのは、そうした材料を元に、事件に直接関わらなかった人たちも一人一人が、それぞれの「真相」を模索し、こうした悲劇を二度と起こさないためにはどうしたらいいか、考えることではないのだろうか。」

としている。裁判所にて、新たな真相が出てこないとなぜ、断定できるのか。真相が出てこないか否かはわからないだろう。精神病として治療することは必要なかったのか。
何年も前の記事を批判することは望ましくないかもしれない。けど、何年の前の話だから、何年の前のブログを考える。
そして、一番は、それぞれの真相があり、それで良いとするなら、大量殺人を行った・指示したとされる麻原氏の真相をどうにかして見る努力は続けるべきではないのか。訳が分からないものとして排除すると、また、訳の分からない人によって大量の市民が殺され、訳の分からないものとして排除し、真相が分からなくなる。これの繰り返しにならないか。
でも、江川さんがここまではっきりと自分の意見を発信することはジャーナリストとして目指したい一面でもある。また、ブログを見ていると様々なことに意見を出している。ジャーナリストとして特ダネを探していく役割ももちろん重要。でも、特ダネを伝えるだけじゃなく、自らの意見を発信していく行為が必要であると思うことを再確認。
江川紹子さんのブログ
それぞれの「真相」~決定はむしろ遅すぎたくらいだ
http://www.egawashoko.com/c006/000152.html
今のところの予定は全部で12回
1. 電車の中で書きなぐった文
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-359.html
2. 麻原のA―麻原彰晃
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-363.html
3. ふりかえりの必要性
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-368.html
4. 制度は勝手に変わる。それっていいの?
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-377.html
5. 殺してしまう。でも。
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-382.html
6. オウムの中は?
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-category-36.html
7. オウムに関するジャーナリズムについて江川紹子さんを通じて考える
8. 人前で自慰する人は普通?
9. 社会は・・・
10. どういう人が殺すのか
11. 水俣病
12. 森達也が言いたかったのではないか。ということ
森達也「A3」
http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%A1%EF%BC%93%E3%80%90%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%91-%E6%A3%AE-%E9%81%94%E4%B9%9F/dp/4797671653

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。