自分達が特別な集団だと思ったら、その特別な集団になるために行なっていることを、
その集団に入っている人はどんな手を使ってでも実行し続けるかもしれない。
それが大多数だろう。
でも、その自分が特別だということから抜け出す人が居るのかもしれない。
だけど、そのためにはそれまで信じていたことのほとんどを捨て去らないといけない。
それも自分の意思で。
天皇が全てだと思っていた日本人という集団は、
終戦でそれを捨て去るように外からの圧力で仕向けられた。
でも、昭和天皇が亡くなったときには、町の明かりが消え、
皇居に向かって大勢の人が土下座をした。
このことは、信じてきたものを捨て去ることの難しさを示しているんだと思う。
そして、この本で描かれていることは、もっと閉鎖的で、
自らのことを特別だと信じ続けているコミュニティに外部から人が入った時の話。
そして、外と中の摩擦によっていろいろなことが浮かび上がってくる。
そこから始まるミステリーと人間ドラマ。
主人公は産婦人科医の既婚女性。子どもが出来るに悩んでいる中、
夫に勧められ、引越しを行う。そこで、夫ともギクシャクし、
周りともなんだかうまくいかない。そんな状態の中、
埋められていた死体をみつけてしまう。
それは、心臓が切り抜かれていて、背中に謎の3つの文字が刻まれていた。
この一件から始まる。
犯人探しミステリーというよりは、陰謀解き明かしミステリー。
特別だと思っている人たちが、「われわれがわれわれであり続けるために」行なっている
強大なこと。そして、誰を信用すれば良いのか、
その集団から抜け出すために必要なことはなんなのか。
人を縛りから解き放つ力は何か。
いろいろなテーマが入っている。
子どもを授かることと産むことについても。
「英米で最も注目されている新進気鋭の作家」である著者のデビュー作で、
この著者の本が日本で訳されるのは初めての様子。
イギリスの田舎の伝承である「クナール・トローの伝説」を元にして
描かれているため、イギリスの中心文化もしっかり理解できていない自分には
入り込むのは難しかったけど、読み進めていけば、結講なドキドキが楽しめる。
主人公は表の性格と裏腹に人に優しすぎだし、簡単に信じすぎだろ!
と思いつつも、その心の描写が細かいからこそ、主人公の冒険にハラハラ出来る。
☆4つ。
深く考えることはなかったけど、考えられなかったのは、
この世界を身近に捉えられなくて、遠いものと考えたからかな。
1,陰謀モノが好きな人
2,ヨーロッパの田舎モノが好きな人
3,伝承モノが好きな人
は外さない作品!
思うことがあったり、良いと思ったり、反論があったり、おかしいと思うことがあったり、質問があったり、言いたいことがあったり、
同意があったりしたら反応をして頂けると幸いです。なるべくというより出来る限り私も反応します。
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小檜山 歩
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