日本でもこんな社会・政治を扱った社会派映画が広まっていけばよいと思う。でも、出ている役者さんの中で有名なのが松坂桃李と本田翼の2人しかいないことに難しさがある。主役の1人は韓国人の女優さん。
でも、思ったよりも広く見られているのは話題性によって見る側にも現状に対する危機感があるからなのかもしれない。
日本における左派ポピュリズム
少し前にベルギーの政治学者であるシャンタル・ムフさんが書いた『左派ポピュリズムのために』という本を読んだ。アメリカのトランプ大統領に代表される右派ポピュリズムに対して力を失いつつある左派がポピュリズムを形作るためにはどのような方向性が必要なのかを記している本で、右派の経済・エリート主義に対してエコロジーが中心に置かれるのではないかと語られている。
日本では現在の政治状況により透明性や政治の私物化への反対、多様性がキーワードになっていくのではないか。山本太郎のれいわ新選組は振り切ることができていない左派政党へのメッセージにも見える。
官僚のプライドをへし折るのは
形だけの民主主義でよいと内閣情報調査室のお偉いさんに言わせる。いかにもおかしい経済特区での大学設立に対する新聞記者と内閣情報調査室の若手社員の戦いを描いていく。戦いといっても権力とマスコミの中で生きている個の戦い。エリート官僚は権力側だと捉えられがちだが、それぞれにはプライドもあるけど、生活もあってなにかあった時には国に家族を人質に取られるかもしれない。
官僚のプライドをじっくり国家に取り込んでいく過程がなんとも言えない気持ち悪さとともに描かれる。実際はこんなことは起こっていないのかもしれないし、誇大妄想と言って吐き捨てることもできるのかもしれないが、起こっていないと断言もできない。
今の政治が100%汚いとも言えないとしたら、100%キレイだと言うのも難しいだろう。そんな中途半端な世の中の中であなたは生かされているのではないかと問いかけている。内閣情報調査室は税金で一般人の情報までも操作しているかもしれない。それが100%否定できない世の中がここにある。
主人公の1人である新聞記者の部屋に飾られている父親からの言葉が印象的だった。
Believe and doubt yourself more than anyone else
(誰よりも自分を信じ、疑え)
ラストシーンの先になにがあったのかはいろんな想像ができるけど、悲しい結末を想像してしまう人が大多数だろう。それだけ、この世の中は悲しいことになっている。
映画を見終わって座ってボーっとしている自分の目の前には東京オリンピックのTシャツを着ているおじさん。そんな世の中に映画を終えて帰ってきた。映画と現実はつながっている。
映画『新聞記者』公式サイト 6月28日(金)全国公開
小檜山 歩
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