関わりもなく、世間で「殺人集団」とまで呼ばれる人間たちと地域住民の関わりから何か世の中が危なくなっているっぽいことを伝えてくる。
殺人集団と呼ばれたオウムの素顔を映し出した「A」からオウムとオウムを取り巻く人達との関係性を描いているのがこの「A2」。
オウムに関する事件の後、残された信者たちは様々な地方で活動を続けようとしていた。活動を始めようとする先々で起こるのは住民の反対運動と行政の受け入れ拒否。厳しい状況に置かれるも修行の日々を送り続けようとする信者と住民たちやメディアとの関わりを描く。
住民との関わり
「A」と比べると荒木浩広報副部長の出番は少ない。物語の後半に上祐史浩と一緒に記者会見に向かう準備をしている姿が映し出されるのが貴重なシーンってぐらいだろう。
1人の信者に焦点を当てるわけではなく、様々な信者が様々な住民と関わり合っていく。罵声を浴びせたり、住民集会で反対運動をする人たちもいれば時が経つことでなじみの客のように信者と会話をする住民もいるという伝えられない事実がある。
右翼の活動に迫るシーンもあり、世の中にうずまく様々な動きが見えてくる。オウムが来ると「オウム来るな!」、「話をしない、身体に触れない」などの張り紙がなされる。
関わったことのない人たちに対してテレビや雑誌で知るイメージだけでこんな言葉を投げかける。マスメディアの姿勢や警察のウソへの批判も含まれている。
マスメディアは信者や住民が仲良く話している姿は決して撮らない。
一番カメラを向けられるのは「私」でもあるオウムの信者と関わる住民たちの姿。もし、自分がオウムが来た時にどんな行動をとるのかを考えさせる。
これからどうする?結局、どうなった?
行く先々での反対運動や法律の枠組みによる立ち入り調査、賠償によって消耗した信者たちはこれからどこへ行くのか。
行くあてがない中でも修行を続ける彼らの潔さには何かを感じると共に、圧力をかけ続けることで解決につながるのかの疑問は出て来ざるを得ない。
現在、上祐派(ひかりの輪)と反上祐派(アレフ)に分かれた信者たちはそれぞれがそれぞれの道を行く。その先には何が待っているのだろう。
そして、信者たちに罵声を浴びせた住民と最終的に仲良くすることを選んだ住民、それぞれの先には何が待っているのか。
人は些細な事で頑なにもなれば、柔軟にもなる。同じ人の中にいろんな性格があること、場合によって人は無関心になり、思考停止にもなり、残酷にもなることが見えてくる。
【おすすめ度】
★★★★★
小檜山 歩
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