リクルートの人たちが考える働き方改革『働き方改革の不都合な真実』(おおたとしまさ, 常見陽平)

 

お仕事で元リクルートの人たちと関わる機会がけっこうあって独特というか他の人達とは違う価値観で動いているように映るのでなんとなく納得ができた。今の働き方改革の風潮に対して好ましくないというかおもしろくないと思っているんじゃないかな。

リクルートはなによりも人としての軸を大切に問い続ける会社である。そんな人達にとって働き方改革がどう写っているのかが語られる。彼らには働き方改革が楽して稼がないものとして写っているのかもしれない。

社内がポエム化してシルバーデモクラシーに

『ポエムに万歳』という本を紹介している中で「一億総活躍」とか「経済成長しないと幸せになれない」などのきれいな言葉が現状に対して疑問を呈する。

働き方改革と成長の因果関係に疑問を投げかけた上でホワイトカラー・エグゼンプション(頭脳労働者の脱時間給)へと進んでいく現状に触れている。

ホワイトカラーエグゼンプション – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%82%B0%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

働き方改革からを成果主義につなげて考えることに対して疑問を呈したうえで、成果主義の難しさからみんなで無茶して稼がないといけないという社会に対してちょっと立ち止まって考えてみることを提案している。

成果主義よりも年功序列のほうが個人的にはしっくりくるんですよ。頑張る人がいて、サボっている人がいても、まあみんなもらえるから、ちょっとイラっとするけどいいか、といい意味で「お互い様」でやれる。

0・100の議論ではなくて、「お互い様」のあいまいな状態をよしとしてきた日本の風土を踏まえた上でその価値観を残してもいいのではないかと問いかけているようにも感じる。女性活躍についてはいろんなところで当たり前として言うべきフレーズがあった。

「女性活躍」と言ったところで、もしも家庭を営む役割がそのままなら、女性が男性と同じ土俵で働けるわけがありません。言うまでもなく、それは不公平です。

女性の職場進出は男性の家庭進出がセットであり、家庭進出をしたくない男性の都合のいい解釈で女性に更に頑張ってもらうように進めてはいけないでしょう。

そこには家を守っていきたい女性がいて男性が家事をしたくてもさせてくれない女性の壁もあるので一概には言えないんだけど、家庭進出をしたくて働いている女性とそれを望んでいる夫婦に会社がサポートしない現実は見直す必要があるでしょう。

受け身をやめようぜ。どうしたいのか言ってみ?

リクルートっぽさを1番感じたのが国家が「働き方改革」を掲げることへの違和感を呈しているこの箇所。

働き方やライフスタイルをお上に決めてもらう、という姿勢を国民が持っちゃダメじゃないの、という抵抗感もあって。国家はセーフティネットでなければならないけど、個々人のライフスタイルに口を出すべきではない

飲み会の場で「お前はどうしたいんだ?」と何度も元リクルートの人に聞かれたのはこんな考え方が念頭にあるのではと思う。

国家が生き方を決めることを嫌うだけじゃなくて会社が生き方を決めることも許さない。社員一人ひとりがどんな軸で仕事・生活をしていくのか、その上でどんな仕事をしたいのかを問いかけているのだと納得させられた。

国家が「働き方改革」として国民の仕事の仕方、家庭のあり方を決めていくことの気持ち悪さがあって、それを気持ち悪いと思わないことにちょっと問題があるのでしょう。

今までの働き方でどーにか?いや、他の道も。

働き方改革でやり玉に挙がることが多い制度に年功序列があり、その点についても年を取った人の何が悪いのか、仕事をしない年を取った人が排除されている流れはあるのだから、年功序列が絶対悪として語られることは避けるべきだと触れる。

そのうえで、医学部では通じないのかもしれないけど、学歴によって一発逆転できる社会は他の国のようにはっきりと階層が分かれているよりはいいのではないかと触れる。

プライベートのイベントに際してキャリアを一旦降りることについて男性だけでなく女性も躊躇する現状にも触れる。キャリアを一旦降りたとしても頑張り直したら報わえる仕組みがあればよいということにもうなずける。

下剋上が可能なシステムがあって、頑張れば報われて、一方で、そこそこ頑張る程度でも不幸せにはならない。そんな安心感が必要なんじゃないかな。

AIだけでなく仕事によって仕事を奪われる中でそのことを嫌がるのではなくてそこそこ頑張りながら気楽に働くことで1人でそこそこ稼ぐ社会を見通す。実力主義を声高に叫ぶ人たちに対してはそんなにあなたに実力があるのかと問いかける。

働き方改革を掲げる前に個人として自分がどう仕事・家庭・社会と関わっていきたいのかを考えることを最初にしないといけないと言われているように感じる。

【手に入れたきっかけ】

働き方改革に関する本をいくつか読みたいと思って買った中の1つ。

【オススメ度】

★★★★☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。