どれからでも1つずつでもやっていかないと…『働き方改革 7つのデザイン』(土田昭夫, デロイトトーマツコンサルティング編)

 

働き方改革をやっていない会社になってしまう。

働き方改革が必要な背景と取り組みべきテーマ

生産性改革、組織風土、スマートワーク、健康経営などの巷でよく取り上げられるキーワードだけではなく、エンプロイー・エクスペリエンス/デザインシンキング、パフォーマンス・マネジメント、1つの組織に依らない働き方なども働き方改革のテーマとして触れられる。

自身の成長、意義ある仕事、私生活と仕事を合わせた人生の充実を目指す優れた人材に肯定的な職場体験をしてもらうには前述の7つの取り組みが必要である前提からそれぞれのテーマで取り組むべき具体的な内容を紹介する。

私が所属している会社ではないですが同業であるコンサルティングファームが働き方改革に関して提唱している本。

働き方改革をする前提として優れたビジネスモデルが成立していることが必要と触れられるけど、それが難しいんだよなぁと言いたくなる。でも、それは別の話ということで、会社として無茶しなくても稼ぐことができている会社が次のステップに進むための働き方改革について参考になりそう。

まずは少子化・高齢化・長寿化とミレニアル世代という社会の背景から、社員が会社に対して帰属意識が低くなっているということに触れられる。そんな状況だからこそ、報酬、ワーク・ライフ・バランス、フレキシブルな勤務を認め、成長機会を与えないと優秀な人材を確保することができないという採用の観点から働き方改革の必要性へと話は進む。

この前提を受け入れた上でないと最初に触れた働き方改革を進める理由がなくなってしまうので、この働き方改革が必要な前提をすり合わせることはどの会社でも必要でしょう。

その前提を受け入れた上で各テーマへと触れていく。すべてを紹介するのは難しいので特に気になった業務効率化のためのBPR、組織風土が作り上げられるメカニズム、パフォーマンス・マネジメントの変化の3つについて紹介する。

業務効率化のためのBPR

働き方改革と直接のつながりがあるものとして取り上げられることは少ないけど、業務改革の手法としてのBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が徹底されていなければやらないといけないということには変わりない。

BPR自体については教科書ともいえる『リエンジニアリング革命』を前にご紹介させていただいたので、そちらを参照していただきたい。

自分で考えるホワイトカラーがいる職場の仕組みはこうなっているはず 『リエンジニアリング革命』(マイケル ハマー, ジェイムズ チャンピー)【本】

働き方改革の中で真っ先に触れられる生産性の向上というテーマは働き方改革が話題になる何十年も前からずっと現場では問いかけられてきていた。

でも、生産性の高い現場ばかりではないということで生産性向上を目指す必要があり、その道具としてBPRが紹介されている。

廃止、標準化、集約化、整流化、平準化、外部化という6つの視点が紹介されている。

業務を見直してみることを通じて業務の効率性をあげていく。当たり前に言われることだけど、やらないと非効率な業務のままというのは確かにと思える。

組織風土が作り上げられるメカニズム

働き方改革を実行するためには働き方改革以前の価値観が残ったままだと難しいということもあって組織風土を変えていくことも必要とされる。

組織の雰囲気や空気感は同業でも異なるし、異業種だったり、規模などで大きく変わってくる。組織風土を変えるためにはまずは組織風土が作られるメカニズムを明らかにする必要があるという観点から整理をしている図が出てくるんだけど、ふむふむとなる。

組織風土を「習慣化された思考・行動様式」と定義した上でそれはビジョン・戦略から生まれる組織体制や業務プロセスなどの「公式のルール」、歴史の中で培ってきた価値観による経営層や上司の言動などの「非公式のルール」、価値観や知識・スキルなどの「個人の能力・価値観」の3つによって作られるとしている。

詳細は図も含めて本の中で確認していただければと思いますが、それぞれの要素に対してアプローチしないといけないというのはコンサルらしい考え方だと感じる。

パフォーマンス・マネジメントの変化

パフォーマンス・マネジメントと言われるとなんのことを指しているのかがわかりにくいけど、乱暴に言ってしまえば人事評価のことを指している。

これも働き方改革の文脈の中で触れられることは少ないけど、今のトレンドでもあり、変わっている企業と変わらない企業の差が大きなトピックでもあるように感じている。

編集者であるデロイトトーマツコンサルティングが定義している未来のパフォーマンス・マネジメントにこんなイメージなのかなぁと少し具体例を書いてみました。

具体例の中には自分自身がこんな評価制度になればいいのになぁと思う願望も含まれていますね。

会社で働き方改革を考えるときのフレームワークを提示してくれている

1つ前に紹介した『働き方改革の経済学』が官僚のような政策立案者向けの本だとしたらこちらは会社で働き方改革を考えないといけない人向けの本に近い。

経済学的には正規労働者を守っている制度を壊す必要があると。経済学的にはそうかもだけど…『働き方改革の経済学』(八代 尚宏)

コンサルティングファームが出している本ということで営業の位置づけもあるんだろうけど、このフレームワークを使って一旦、社内で考えてみることも大切なんでしょう。

【手に入れたきっかけ】

働き方改革に関する本を何冊か読んでみようと思ったうちの1冊。

【オススメ度】

★★★★☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。