何も言わないことの価値を認めることが大切な時代になってきた。
単行本としては2003年に出された本だけど、色あせていない。
何か「社会はこうあるべき」とか、「あなたはこうすべき」などのメッセージが詰まっているわけじゃない。内田樹の視点から社会を見た時に考えたことをまとめただけ。
テーマはイラク戦争、朝日新聞、大学、セックスワーカー、戦争など多岐に渡る。それぞれのテーマが様々な人によって語られている現状を自分の視点から語っていく。
語りの中には人に何かを強いるような文章はない。
「私はこう思う」、「私にはこんなことがあった」、「私はあの表現についてこう思う」と記される。
これは正しいことを言ってもみんなが聞いてくれるわけではないという社会に対する理解から発しているのだろう。
人が他の人を説得しようとする試みはおこがましいと自覚し、私はこう思う。あなたはどう思うのか?と問いかけることの大切さがこの本にはある。
投げっぱなしでもいいじゃないか。
命令するのではなく、意見を発し、相手がどうするのかは相手に委ね、相手の判断は尊重することが出来る社会であり続けてほしい。
そうならなくなった時には少しずつ世の中が息苦しい物になっていく気がするから。
【キーワード】
イラク戦争
朝日新聞
正しい意見
いくばくの正しさ
聞き手
大学
正論はウザい
「セックスというお仕事」
熱く戦争を語ってはいけない
一人の国民は、その国を代表する
人間の価値
平和の代償
【引用】
長く生きてきて分かったことはいくつもあるけれど、その中の一つは「正しいこと」を言ったからといって、みんなが聞いてくれるわけではない、ということ
誰からの反論も予期しないで語られるメッセージというのは要するに誰にも向けられていないメッセージである。「百パーセント正しいメッセージ」はしばしば「どこにも聞き手のいないメッセージ」である。
「敵とともに生き、反対者とともに統治する」
どうしてもまず「自分の意見に同意してくれない人とも私たちは共生してゆかなければならない」ということについて「だけ」は合意形成をしておかないと困る。
私がやろうとしているのは、「大人の思考と行動」とはどういうものかについて、「若者たち」に人類学的なリサーチレポートを提出することである。
大学の社会的機能の一つは、その時代の支配的な価値観と「ずれている」ことだと私は思っている。「遅れている」でも「進みすぎている」でも、とにかくその「ずれ」のうちに社会を活性化し、豊かにする可能性はひそんでいると私は思う。
正論家の正しさは「世の中がより悪くなる」ことによってしか証明できない。したがって、正論家は必ずや「世の中がより悪くなる」ことを無意識に望むようになる
「自分の考え方」で考えるのを停止させて、「他人の考え方」に想像的に同調することのできる能力、これを「論理性」と呼ぶのである。
人間は変化するが、変化する仕方は変化しない
人間の価値はその人にどれほどの能力があるかで査定されているのではない。その人の「替え」がどれほど得難いかを基準に査定されているのである。
【手に入れたきっかけ】
覚えていない…
【オススメ度】
★★★★★
小檜山 歩
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