リアリティと臨場感に引き込まれるSF群像サスペンス 『百年法』(山田 宗樹)【Kindle・本】

 

もし一生、生きることが出来る薬を手に入れることが出来たら使いますか?

もし、その薬を飲んだら100年後に必ず死なないといけないとしても使いますか?

第二次世界大戦後にHAVIと呼ばれる治療が確立されたパラレルワールドが物語の舞台。HAVIを受けると人間は老いなくなり、一生、生きることが出来るようになる。

HAVIを受けた場合は生きられる期間を法律で短く制限した他国と異なり、日本では百年法と呼ばれる法律に基づき、100年もの間、生きることが出来ている。

HAVIを受けた第一世代が治療を受けてから100年の時が近づいてきた頃。世間では百年法で本当に死なないといけないのかの不安が渦巻いている。それだけではなく、ダラダラ生き続けた上の世代によって成長が阻害され、中国だけでなく、韓国よりも衰退した国になっているのが日本の現状。

現在の日本を憂い、確実に百年法を実施しようとする遊佐章仁が主人公。

百年法施行と一生、生きることが出来ることをめぐる物語は今の日本社会の様々なことに疑問を投げかける。

民主主義は最良の政治体制なのか?

イギリスの総選挙に関する番組を見て「決められない政治」という単語が出てきた。対義語は「決められる政治」なんだろうか。

チャーチルが「民主主義は最悪の政治形態らしい。ただし、これまでに試されたすべての形態を別にすればの話であるが」と言ったように民主主義では意思決定に時間がかかり、物事を進めるスピードが落ちる。

だったら1人の強力なリーダーに任せればいいとの語りをする人も存在する今の世の中に民主主義ってなんだろうと語りかけてくる。

人が生きるとは何か?

民主主義に関する問いよりもこちらの問いの方が主題だろう。HAVIによって老いずにずっと生きることが出来るようになった人は生きているのか。

百年法によって100年で死ぬと決められた人は生きているのか。

それ以前に、今、この時代を生きている私達は生きているのか。生きるって何か。ずっと生きられる治療であるHAVIと百年法から考える生きること

リアリティと臨場感に引き込まれるSF群像サスペンス

民主主義とか生きることとか難しそうだと思わせたら違うので、説明させて下さい。

シンプルに、ストレートに面白い近未来SFなのです。政治の駆け引き、官僚の策略と心、自分が投影できる男の活躍など、小説として結末が気になり、そこにある世界で出てくる人たちと一緒にいるぐらいに入っていける世界観のエンタメ小説。

サスペンス系の小説が好きな方ならのめり込むはずなので、ぜひ、いかがでしょうか?

【手に入れたきっかけ】

Kindleキャンペーンで気になって購入!

【オススメ度】

★★★★★

【参照】

チャーチルの英語の名言・格言集。英文と和訳

http://iyashitour.com/archives/27643/3

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。