大田区総合体育館のメインイベントは最強を決める戦いというよりはプロレスらしい1人のレスラーの復活の物語の第一章のフィナーレのような戦いだった。竹下幸之介という大きな存在がいる中で強さは認められつつも1番にはなれなかった遠藤哲哉は両国国技館大会で竹下を越えてチャンピオンになった。AEWでも戦う竹下がいないDDTを支えていくのだろうと誰もが思った矢先に事件は起こった。
さいたまスーパーアリーナからの物語
遠藤哲哉はさいたまスーパーアリーナでのNOAHとの対抗戦で中嶋勝彦のビンタで失神してしまった。時のチャンピオンが他団体のチャンピオンでもないレスラーに失神させられてしまうという大きな事件はプロレス界でも大きな話題になり、遠藤は恥をかかされてしまった。
欠場とともにベルトを返上したことにより、KING OF DDTトーナメントにベルトが賭けられることになった。遠藤不在のトーナメントで優勝したのは遠藤が失神したリング上にいた樋口和貞だった。強さは垣間見えているのだけどどこか一皮剥けないレスラーが頂点に立ち、DDTを支えていこうとする中で遠藤哲哉をビッグマッチの挑戦者として指名した。遠藤にとっては厳しい指名かもしれない。でも、プロレスラーは戦わないといけない。大田区のリングに立った遠藤哲哉は悲壮感と覚悟とどこか晴れ晴れした雰囲気を見せていたように映る。
上手いこと戻ってこれない中でビッグマッチのメインに立った遠藤哲哉
万全かどうかはわからない。復帰した矢先にコロナで再び欠場するついてなさすぎる中でも大田区大会には間に合わせてきた。最初で最後の前哨戦で樋口としのぎを削った後にはプロレス総選挙でDDTの選手が選ばれていない危機感を語った上でDDTの未来を見せると宣言する。
どこか天才肌なのかマイペースに見える遠藤が不恰好かもしれないけど感情をあらわにすることで樋口も何か感じたものがあるのかもしれないと思わせるやりとりだった。そして、リングの上に立って戦いを見せた。どこまで本調子だったのかはわからないけど戦う姿を見せてくれた。それだけでもこの試合には意味があるし、さいたまスーパーアリーナでの消えない出来事を背負って戦う覚悟を感じさせる1人のレスラーのかっこよさがあった。ただ。勝利したのは樋口和貞だった。
樋口和貞が超えていく。そして、竹下幸之介
圧勝とまでは言わないが完勝だったかもしれない。遠藤哲哉の攻撃を樋口和貞は受け止めて上をいく技で叩き潰していった。エプロンでアイアンクロースラムを放つなどリングを広く使った技もありつつ「歯、食いしばれ!」と叫んだ上でのビンタでさいたまスーパーアリーナを彷彿とさせるようなビンタで遠藤の復活を盛り上げた。最後はここ最近のフィニッシュホールドであるプレーンクロースラムで派手に投げ捨てて3カウントを奪って樋口にとっても大きな出来事になったさいたまスーパーアリーナに区切りをつけたと言ってもいい試合だった。
病み上がりの遠藤と向き合う樋口にも難しさがあったであろう試合にも関わらずにやりきって次へと進む。相手にはまさかの竹下幸之介を指名した。もっと勿体ぶってもよかったカードだろうと思いながらも前進を止めないDDTの覚悟を感じさせるカードですぐにチケットを買ってしまった。それだけ今の樋口の強さは追いかけたくなる強さだった。
いろいろあったDDTが1つの区切りをつけて前に進む大会としてこの大田区体育館のメインイベントがあり、区切りをつけてくれた。
WRESTLE PETER PAN 2022 | DDTプロレスリング公式サイト
https://www.ddtpro.com/results/18692
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小檜山 歩
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