表紙には「プロレスをなめるな!」、ただ、この雑誌の編集者には「世間をなめるな!」と言いたい。
プロレスファンにとっては大きな出来事が起こった直後の『週刊プロレス』。プロレスファンにとっての大きな出来事とはプロレスの大きな団体の1つである全日本プロレスが買収されたということ。
買収主がFacebookでプロレスの「ガチ」・「やらせ」について語り、「ガチが出来ないレスラーはクビ」とまで言い、全日本プロレスの両国大会の全試合後にリングに上がり、批判を行ったレスラーに張り手を食らわせた。そこに別のフリーの選手が殴りかかった。この事件の顛末レポートが多くのページを占めている。
プロレスにおけるガチとは何か。説明が出来ないのがプロレス。自分も説明ができない部分に惹きつけられた。雑誌の編集長もこの新日本プロレスオーナーの騒動について、ページを割いて自らの意見を語っている。世間一般は「やらせ」と「ガチンコ」の二元論でも仕方ない。でも、プロレスオーナーがそうではいけないと批判している。プロレスファンとしてはそう思いたい。
でも、本当にそれでいいのか。
身内だけの論理でやってきたからこそ、赤字になり、買収されることになってしまったんじゃないかと考える必要があるんじゃないか。去年、30億円もの純利益を出している世界最大のプロレス団体WWEはプロレスをショーとして認め、台本の存在を認めている。そんな中、日本の大手プロレス団体はそれを認めない。利益が上がっているならいいけど、そうじゃない現実がある。
プロレス唯一の週刊誌として、目を逸らしていいのかという疑問がある。今回の新オーナーを擁護する論調しかなくていいのか。昔ながらのやり方で上手くいかず、狭い業界の中でうまくいかない部分に対して批判をしないのは業界自体が腐っていく原因とならないか。腐らせないためにこの雑誌が何かしら出来ないのかと感じてしまう。
世間は狭い世界の論理を受け入れられないこともある。その時に世間に対してある程度適応しないとその狭い世界はなくなってしまう。
【引用集】
「レスラーがナメられたら、これはもうプロレスじゃない」(49)
「レスラーに手を出したらレスラーのやり方でしか解決させてもらえないと僕は思います。これは僕の先輩がそうしてきたとかじゃなくて、僕のプロレスラーとしての考えです。」(49)「あなたたちが自分たちのしごとに子供のころから夢を持って、すごくつらいことを一生懸命にやってきた仕事をナメられたら、その社会の流儀で裁かれるのも仕方ないと思います。」(49)
小檜山 歩
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