2025年4月25日、後楽園ホールでマリーゴールドの「Rising Spirit2025」が開催された。私にとって10ヶ月ぶりのマリーゴールド現地観戦であり、お目当てはメインイベントのマーベラスとの団体対抗戦であった。後楽園ホールでのタッグのタイトルマッチで敗れたマーベラスが、自分たちのリングでやり返した上で再び後楽園ホール大会に乗り込んでくる。どんな試合になるのか、私は大いに注目していた。そんな中で、ひときわ目を惹かれた選手がいた。旗揚げの時にアクトレスガールズから移籍して戦ってきた松井珠紗選手である。
スーパーフライ級を狙っていた荒けずりな若手から…
旗揚げ戦で松井は翔月なつみと組み、天麗皇希、後藤智香と対戦したが、そこまで印象には残らなかった。しかし、旗揚げから2回目の後楽園ホール大会では、先輩である翔月なつみから3カウントフォールを奪い、スーパーフライ級の初代王者を決めるトーナメント開催の口火を切った。

当時、ライバルであった翔月なつみの安定感の強さもあり、私にはそこまでの説得力は感じられなかった。結果的に、スーパーフライ級の初代王者は翔月なつみが獲得し、松井はベルトを手にすることができなかった。

自分は翔月なつみ選手の雰囲気が好きということもあって、松井についてはあまり印象に残っていなかった上、マリーゴールドを観戦することも減っていたため、情報も少なかった。しかし、週刊プロレスやXを見ていると、気になる情報が目に留まった。
松井珠紗がダークネス・レボリューション(以下、DR)に入ったらしい。
マリーゴールドの最強外国人として活躍していたポジラ(現在は家庭の都合で帰国)を中心に、野崎渚、CHIAKIなどが結成していたヒールユニット、DRに松井珠紗が入ったという記事を見かけた。
どちらかといえば正統派として、カラッとする中にスピードを活かす戦いをしていくのだと思っていたので、この動きは意外だった。しかし、そもそも私はこのレスラーのことをよく知らない。そんな感情で、この日の第4試合に組まれたマリーゴールドのタッグ王座戦であるツインスター王座戦も、そこまで注目していなかった。だが、試合の中で、松井珠紗に惹かれていったのである。
高橋奈七永に向かっていく戦いが弾けていた
この日の唯一のタイトルマッチでありながら、セミファイナルの一試合前に組まれたタッグの王座戦。チャンピオンチームのパッション親子(高橋奈七永、山岡聖怜)に、DRから松井珠紗とCHIAKIのタッグが挑戦するカードだ。引退を控える高橋奈七永がここでタッグ王座を落とすことはないだろうと感じるカードで、あっさりDRが破れると思っていた。しかし、試合結果としてはDRが敗れたものの、試合内容は”あっさり”ではなかった。
序盤はパッション親子の連携や、プロレス界の人間国宝の名に相応しい高橋奈七永の厚みのある攻撃に、DRは押される時間が長くなり、これは厳しいのではという攻防が続いた。


山岡聖怜もゴールデンルーキーと呼ばれるのにふさわしい戦いを見せていた。ドロップキックに変形のボディスラムと、立て続けに技を決めていく。


そんな中で、DRが押し返したと感じ、松井珠紗に視線を奪われ始めたのが、高橋奈七永への連続ドロップキックだった。ロープに走り込んでのドロップキックを4連発で決めた。どのドロップキックも重みを感じる技で、私が好きな突き刺さるドロップキックだったこともあって、惹きつけられた。

そこからサードロープにもたれかかる高橋奈七永にボディアタックを決め、鋭い表情を見せた時には、私の心が鷲掴みにされた感覚になった。


そこから高橋奈七永とのエルボー合戦あり、持ち上げられても丸め込みあり、覆い被さってのエルボーありで、高橋奈七永が押されていると感じるシーンが増えていった。特に松井の鋭い膝が、蒼魔刀の形で高橋奈七永に叩き込んだのは説得力があり、勝負が決まってもおかしくないと感じるシーンだった。
そこからCHIAKIにタッチが渡って高橋奈七永とCHIAKIの攻防で決着に向かうのだが、権利がない松井珠紗に注目してしまう自分がいた。
タッグのタイトルマッチでは敗れるも…
CHIAKIもタッグのタイトルマッチに出てくるだけあって、1年前とは違う進化を見せたように見えた。高橋奈七永にぶん投げられ、張り手を喰らうも、体格差のある奈七永を持ち上げて投げ切る力強さを見せる。



そこからパッション親子の連携に捕まって高橋奈七永のスライディングDを喰らったシーンは、決着がついたようにも見えた。しかし、CHIAKIはなんとか返すと、DRらしく椅子を使って奈七永の動きを止め、DRが立て続けにトップロープからのダイビング攻撃を放つ。この時の松井珠紗の表情が、怖さと必死さの両方があるように見えて惹かれてしまい、この試合で推しになったと感じる瞬間だった。松井のダイビングフットスタンプからCHIAKIのダイビングギロチンドロップが決まった瞬間は、大番狂せが起こってもおかしくない説得力だった。


これを返した高橋奈七永は、CHIAKIに対してラリアット、バックドロップと畳み掛けてから、説得力抜群の冷蔵庫爆弾と畳み掛けて3カウントを奪って決着となる。



結果としては予想通りの中でも、見ている自分としては試合の中でどちらが勝つのかわからないと感じる熱戦だった。
敗れたCHIAKIと松井珠紗は悔しさを滲ませながら退場していった。松井が気になり出している自分だが、DRの試合はセミファイナル、メインイベントとないし、また、マリーゴールドを見にきた時を楽しみにしようと思っていた。しかし、予想外のタイミングで松井が出てきた。
白いベルトに空気を読まずに名乗りをあげる
この日のセミファイナルは、マリーゴールドの最上位のベルトに位置付けられるワールド王座、通称赤いベルトに挑戦表明をしたMIRAIに対して、林下詩美が査定をすると言い放った結果組まれた査定マッチだった。赤いベルトの王者である林下詩美はスーパーフライ級の王者であるビクトリア弓月と組み、査定される側のMIRAIはユナイテッド・ナショナル王座、通称白いベルトの王者である桜井麻衣とタッグを組んで試合に臨んだ。
結果はMIRAIが強烈な左のラリアット2発を林下詩美に決めて直接ピンフォール勝ちを奪い、5.24代々木でのタイトルマッチが決まり、マリーゴールドを担う2人の物語が進んだ。そんな中で、なぜか松井珠紗が出てきてマイクを握った。
観客も自分もどうしたんだろうと一瞬思う中で、スーパーフライ級を改めて取りに行くのだろうと思っていたがそうではなかった。挑戦表明をしたのは桜井麻衣の白いベルトだった。
桜井麻衣から今日、タイトルマッチで負けたことを指摘されるも、負けたのはCHIAKIだと言い放ち、ユナイテッド・ナショナル王座はマリーゴールドの外の選手とばかり試合をしていることを非難して、挑戦を迫り、認めさせた。

確かにタッグマッチで負けたのはパートナーなのだが、それを臆面もなく言い切れる今の松井珠紗には、なりふり構わずの中に自然体で戦っているような強さを感じることもあって期待してしまう。
5月4日、後楽園ホールでのユナイテッド・ナショナル王座戦が決まり、松井珠紗選手にとって大きな勝負となるであろう。この王座戦に大いに注目したい。ぜひ、会場で松井珠紗選手の弾けるような戦いを目の当たりにしてほしい。久しぶりのマリーゴールド観戦でそう感じた。
小檜山 歩
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