この本から学ぶ特捜の基礎と改革案~郷原 信郎『特捜神話の終焉』~

かなり前に、この本については書いていて、この本からいろんなことを書こう。なんて思っていたけど、書けていなかった。とりあえず、書き始めます。
元検察官の筆者が語る検察についてと一連の事件を受けてなのか、受けなくてもなのかは分からないけど、検察の改革案。まず、刑事事件において

P6 刑事事件の起訴を行うこと、つまり刑事裁判にかけることは検察官の権限とされ、検察官以外が行うことはできない(起訴独占主義)。さらに犯罪事実が認められても、情状を考慮して起訴しないという起訴猶予処分を行う権限が検察官に与えられている(起訴便宜主義)。日本の刑事司法は、この二つによって、刑事裁判の対象にすべきかどうかという刑事司法の「入り口」の判断が、完全に検察官に委ねられている。

ことから、検査が刑事司法の「正義」を独占していることを指摘している。例外として、小沢氏が強制起訴となった検察審議会があるんだろう。そして、

P7 裁判での立証が検察官調書等の供述調書中心に行なわれる「調書裁判主義」

P7 検察官の主張する事実を否認する者は、長期にわたって身柄拘束されるという「人質司法」

などの検察に有利な制度、そして、

P7 検察の判断理由について公式に説明を求められることはなく、不起訴処分の理由は、証拠が不十分という「嫌疑不十分」なのか、犯罪事実は認められるが情状を考慮して起訴しないという「起訴猶予」なのかという点以外は、公式に説明は行なわれないし、その根拠となる不起訴記録も開示されない。

ことを指摘し、公平なプロセスであると思われがちな刑事司法権力が検察に集中している事実を示す。また、判断の適正さも

P7 「個々の検察官だけではなく、検察庁の組織としての判断が行なわれること」

によって保証されている現状を語る。そして、

P29 「真実は法廷ではなく検察官の取調室で明らかになる」という考え方を前提にしていることを示している。検事の前で本当のことを話し、法廷では偽証をするというのは、人間として自然な行動だという考え方が、背景になっているとみるべきだろう。

というような刑事司法の存在を述べている。ここまで読むと検察はやりたい放題という言葉がしっくりくる。でも、ここまでは制度によってやりたい放題ということを示したにすぎない。そして、その制度によって多くの人が被害にあうことも考えられる。
でも、それ以上に一般人が持っていない、起訴をする権限を持っていることはその主体である検察自体への批判が抑えられるということが考えられる。なぜなら、人は誰しも法律違反を犯しており、後ろめたいこともあるからだ。立ち小便を一回もしたことのない、信号は絶対に守る、自転車に乗る時は曲がる方向に合図を必ずする、横断歩道は必ず手を上げて渡る。など、全ての法律を一回も破ったことがない人は居るのだろうか。本当に少数だろう。だからこそ、別件逮捕が可能だし、微罪での取り調べで、他の罪についての取り調べが行われる。その人が罪を犯しているのか否かということを決められる唯一の存在を批判すると自分に不自由が生まれるかもしれない。と思い、批判しない人を責めるのは難しい。
批判しにくい制度を持っていることが、検察が持ちこたえられる理由の1つだと思う。そして、筆者の改革案は「特捜検察のパルチザン化」というもので、

P295 現在特捜部に配置されている検事の半数程度を、「パルチザン検事」として東京地検刑事部や他の地検の特別刑事部などに併任の形で配置し、一般事件の捜査を行なわせると同時に、特捜事件の端緒の把握や内偵調査活動を行なわせるという方法が考えられる。

というものである。自分はそれ以上に検察を監視する制度を整える必要があるのかな。と思った。この一応の基礎知識の中、個別の例に入っていく。それは次の機会に。
1、この本から学ぶ特捜についての基礎と改革案
2、ライブドア 堀江事件について
3、マスコミと特捜
4、会計士の想い
5、ノットギルティとギルティ

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。