ボーイはガールにミーツするけど、ガールはボーイにミーツしない。『翡翠の色の、君だけの夏。「視える」修復士と洋館の謎』(渡波 みずき)

 

思春期の男性が同い年か少し上の女性と会ってその人に支えられたり認められたりしながら成長する物語をボーイ・ミーツ・ガールと呼ぶことがあるけど、ガール・ミーツ・ボーイって言葉はない。

なんでなんだろうと思うけど、実体験に合わせるとそりゃそうだなぁと思うのではないでしょうか。だって、ガールはボーイじゃなくてプリンスにミーツする。

中学校や高校生の頃にクラスの何人かの大人っぽい女子はたいがい上の年代(中学生だったら高校生、高校生だったら大人とか大学生)と付き合ってましたよね。千葉のそこそこ都会に住んでいたから余計そうだったのかもしれないけど、そんな女の子は一定数いたでしょう。これをガール・ミーツ・プリンスとでも呼んでみましょう。

この物語もガール・ミーツ・プリンスものといえるでしょう。お話はホラーだったり、女子校もの要素だったり、歴史ものだったり、ミステリーだったりといろんな要素が入ってるんだけど、一番はなんといってもちょっと冴えない女子高生であるひよりと建物を修復する仕事をしている遊佐の関係性。

自分に自信がなく、女子校のクラスでもいじめられ気味のひよりが遊佐の手伝いをすることで少しずつ変わっていく。プリンスである遊佐によって変わっていくガールがひより。ボーイ・ミーツ・ガールのボーイと同じようにプリンスに認められたくて成長していく姿の描写が細かい。

学生として年齢を重ねていくことで難しくなる親との関わり方だったり、人を信じることができることの幸福だったりに関する遊佐の言葉は悪くない。

受けとりたくなりものを受けとり続けると、ひとはどんどんと卑屈になる。わざわざ、他人のゴミ箱になってやる必要はない。嫌なものは嫌、それでいい。無理をすることはない。辛いなら我慢などしないことだ。

君は愛されて育ったから素直にひとの善意を信じられる。すばらしいことだ。だが、だれもが同じ境遇にあるとは、思わないほうがいい。

一部のガールには周りとの関わり方に悩んでる時にこんな言葉をかけてくれるプリンスがいて少しずつ大人になっていく。もちろん、大人の難しいこともおしえてくれるのがプリンスだったりするんだろうけど、それはまた別のお話。

高校生とか中学生が読み物として楽しめるかな。自分の娘ができたときに読ませてみたいと思いながらも自分のプリンスを探し出さないか不安ですが…

【手に入れたきっかけ】

「本が好き!」というWEBサービスの献本キャンペーン!

【オススメ度】

★★★☆☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。