「なぜ?」を考えない世界になっている~ふりかえりの必要性・森達也「A3」から思った事 Part3~

それでは、オウムについて、第3弾。意味が分からない人は「電車の中で書きなぐった文」
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-359.htmlまで。

ここでは、振り返りの必要性について2つの点から話そうと思う。まず、前提。オウムの話が出ると(テレビでも)「早く死刑にしちゃえばいいんだよ」という発言もしくは、「どうでもいい」が多くを占めている。それが、今の社会。

だけど、森さん(筆者)はそう考えていないように思える。こひやまは読んでいて2つの振り返りの必要性を念頭にしているのではないかと思えた。

P11「考えてほしい。あの事件はなぜ、どのように起きたのか。彼と事件によって、この社会はどのように変わったのか。現在はどのように変わりつつあるのか。」という文章を参考にすると、

社会は変わった。だから、考える必要がある。とも言えるし、なぜ、起きたのか分からない。だから、考える必要がある。とも言える。多分、両方なんだと思う。だから、一つずつ考える。

一、 変わった。だから、考えないといけない。
オウム以後には社会は変わったと筆者は考える。得体の知れないものに多くの人が恐怖し、監視カメラが当たり前になり、全てのメールは権力に監視させており、地域のつながりは薄くなり、国としてのまとまりを求めた。その帰結が日本での小泉政権であり、イラク戦争参戦への圧倒的な賛成だったんじゃないかな。日本という国がとてつもない支持率によってまとめられ、得体のしれない存在であるイラクへの攻撃に参加する。これって、ナチスドイツと変わらないんじゃないかな。

これの起因を筆者はオウムに見出す。欧米では9.11だが。日本ではその6年前である1995年のオウムと阪神淡路大震災が原因で人々が恐怖を感じ、大きな力に守ってもらうことを求めるようになった。もちろん今も。

そのきっかけをオウムとするならこの問題は私たちの生活に大きな影響を与えている。監視カメラに見られ、電話・メールは盗聴され、その気になれば携帯を利用して位置を特定される。その社会になった要因でもあるこの問題を考えないといけない。というのが一つ。

二、 分からない。だから、考えないといけない。
これが、2つ目。筆者はナチスドイツの行為に関して以下のように述べている。

P180「なぜあれほどに残虐なことができたのか。その回答を戦後ドイツは、ヒトラーが不在のままで模索するしかなかった。法廷で得られる証言の多くが「自分は指示に従っただけ」なら、その指示の中枢にあった意思や思想や信条を確かめねばならない。彼らが何をどう間違え、何がどう食い違ったのかを知らねばならない。

そうでなければ進めない。

だからこそ麻原に語らせねばならない。事件の背景には何があったのか。どんな言葉で弟子たちに犯罪を命じたのか。そのときはどんな思いでいたのか。語る言葉を彼が持ち合わせていない可能性ももちろんある。それはそれでよい。それを知るだけでも、現状からすれば大きな進展だ」

その通りである。なぜ、ヒトラーがジェノサイドを行ったのか。その理由は類推ができる。しかし、行った後にヒトラーの口からは語られない。それは、もったいない。なぜ、そんなことが出来るのか。ひょっとしたら自分たちもそんなことを行う可能性があるからこそ聞く必要がある。ヒトラーは語る前に死んでしまった。でも、麻原氏は未だ生きている。だから、聞いて考える必要がある。自分たちが麻原彰晃になる可能性はないのかを。

しかし、多くの人が話を聞けるわけがない。ということでその話を聞いて考える可能性を閉ざしてしまっている部分もある。その点について、筆者は次のように返す。

P272「(麻原氏が話をすることについて)「期待できない」という主観的な述語が、あるべき審理よりも優先されるのならば、それはもう近代司法ではない」

この文脈ではお察しの通り司法プロセスについて述べているが、それ以前にやはり、考える必要があると思う。

日本に居る誰がオウムがサリンをまいた理由を根拠をもって説明できるのか。出来ないなら、証明できないまま死刑にしてしまっていいのか。ということを考える。

こひやまが最近思うこと。「なぜ?」を考えない世界になっている気がする。「なぜ?」は人の気持ちが関わり、一番面白いところでもあり楽しいことなのに。

八百長を行ったとする。だとしたら、なぜ、それを行うのか。
酒井法子が覚醒剤を使ったとする。だとしたら、なぜ、使ったのか。
管さんが首相になりたかったとする。だとしたら、なぜ、なりたかったのか。
社会を変えたいと思うとする。だとしたら、なぜ、そう思うのか。

この問いは答えるのが難しい。でも、大切なことであり、人を引き付け、考えさせるところではないのかな。表向きの事実も大切。でも、隠された「気持ち」という事実も探る必要があるんじゃないかな。

まあ、脱線したが、こひやまは考える必要があると思う。だから、このブログも続ける。

今のところの予定は全部で12回
1. 電車の中で書きなぐった文
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-359.html

2. 麻原のA―麻原彰晃
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-363.html

3. ふりかえりの必要性
4. 制度は勝手に変わる。それっていいの?
5. 殺してしまう。でも。
6. オウムの中は?
7. ジャーナリストを江川紹子さんを通じて考える
8. 人前で自慰する人は普通?
9. 社会は・・・
10. どういう人が殺すのか
11. 水俣病
12. 森達也が言いたかったのではないか。ということ

森達也「A3」
http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%A1%EF%BC%93%E3%80%90%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%91-%E6%A3%AE-%E9%81%94%E4%B9%9F/dp/4797671653

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。
小檜山 歩
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。