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タイのリアルの中でまっすぐもがくリアルがよかった。「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」

 

高校生が集団でカンニングをするテクニックに注目する娯楽作品でもあるんだけど、それ以上にタイ社会の現実がこれでもかと描かれていることのほうが印象に残った。

クラスのテストでのちょっとしたカンニングが留学をしたい高校生が受ける国際的な試験の1つであるSATでのカンニングへとつながる。中国では実際に不正が起こっているようでそれに着想を得た作品。カンニングのテクニックは本編を見てもらうことにして、タイ社会の現実についてのほうが印象に残り、懐かしくもなった。

SAT (大学進学適性試験) – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/SAT_(%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%80%B2%E5%AD%A6%E9%81%A9%E6%80%A7%E8%A9%A6%E9%A8%93)

タイの現実とタイ語に懐かしくなり、リアリティを感じる。

タイ語に懐かしさを感じるのはタイでの経験が今の自分を形作る1つなんだと実感する。タイで1年間とちょっとの間、トレーニーとして働いていた。日常会話まではできるようになりたいと思っていたけど、そこまでにはなれなかった。

でも、「本当に?」と問いかける「チンロー?」や「なんとかなるよ」でタイ人の口癖に近い「マイペンライ」が出てくると聞き取れる嬉しさがあった。映画に出てくる制服姿の高校生も町並みでよく見かけた。

そして、タイは日本よりも格差が見えやすい環境だった。首都で国際都市でもあるバンコクに住んでいたんだけど、『だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人』で描かれるような日本人の間の格差だけでなく、タイ社会の中でも格差がある。

現実として見ていないバンコクのお話。だから、つらい。どうもできない。しない。『だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人』(水谷 竹秀)

日本人のマネージャーが住むようなハイクラスのホテルの隣に住んでいるお金持ちのお嬢様もいれば、勉強を頑張ってバンコクに来るような地方の本屋の娘もいる。高級レストランでの立ち振る舞いも違っているし、道のいたるところに物乞いもいる。そんな格差は子供にも。

学校にデカデカと飾られる生徒の写真の裏には…

歩いていると生徒の写真がデカデカと飾られている学校を見かけたけどそれは特別奨学生だったりしたんだなぁと今になって思う。海外で勉強するために都会にあるいい高校にはお金持ちの子どもは賄賂を払って通い、地方の子どもは勉強を何倍も頑張って授業料が免除になる奨学生として通う。そんな格差が背景にある。

日本で高校生が中心として描かれる映画は恋愛者かスポーツもので親や先生などの大人によって守られていることが多い。でも、この映画の主人公は実際にある格差に対して勉強とカンニングというずる賢さという自分の力で格差を越えようとして、その手段の是非は見るものに委ねられている。大人はその格差を見て見ぬふりをしながらも子どもを支える完全ではない存在として描かれる。

日本の高校生を主役にした映画にはないリアリティ

高校生になると親や先生であっても完璧ではないことが見えてくるお年頃であり、その源現実が描かれているのも日本の高校生を主役とした映画にはないものがあった。

少し前に医学部入試の差別が話題になっていたけど、基本的に大学入試では学力による逆転がある。でも、勉強に集中できるかとかそもそも大学に行かせてもらえるのかはそれぞれの家の経済力によって異なる。

大学に行ったとしても留学や海外語学研修などは経済力によって参加できるかどうかが変わってしまう。タイは日本よりも経済力による差が顕著で海外留学に行くための費用だったりそもそも高校に通うための学費だったりを自らの手で稼がないといけなかったりそもそも勉強させてもらえるのかが違ってくる。

そんな現実に黒木華さんに似てる主人公の高校生が立ち向かうための手段としてのカンニングには成績を上げるためとは違う重みがあった。

カンニングをするきっかけになった友達の立ち振る舞いは『烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ』の「悪意が無ければ、全てが許されるのだと知っている者を、決して許すことは出来ない。許すべきではないと思っている。」という言葉を思い出させた。そんなタイ人もいたなぁとも。

自分が苦手な女性ってこれだわ…『烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ』(阿部智里)

【おすすめ度】

★★★★★

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。