表紙には「オードリー さよなら、2011年」。
なんで、2013年になった今になってこの本?とおもわれるだろう。情報スピードが早い昨今。1年以上前の雑誌に価値があるのか。
本気で思う。この雑誌には価値がある。
1つだけ、言えるのはこの雑誌は☆5つ中5つだということ。
この雑誌を一言で言うと、「尖ってる芸能誌」。アイドル誌とかお笑い誌にはない、芸能から社会、そして、読み手を写し出す。
特集1のオードリーについての見出しでは、M-1グランプリが終わり、お笑い番組が終わり、東日本大震災が終わり、祭りが終わった。その後、どう処理をしていくのかを問うている。大騒ぎの後、どう生きていけばいいのか。M-1グランプリでキャラ芸人として出てきたのにも関わらず、消えずに今でも芸能界の中で活躍しているオードリーから考える。オードリーへのロングインタビューだけではなく、ラジオのプロデューサー、どきどきキャンプの佐藤満春、鈴木おさむからそっくり館キサラへの流れはオードリファンならずとも何度も読み込める。
震災後初めてのオードリーのオールナイトニッポンで彼らはいつも通り、笑いある放送を行い、新作漫才を2本披露した。いつも通りだけど、少しいつも通りじゃない漫才だった。その放送に秘められた想い、「芸人交換日記」という舞台の裏側、2人のこれからを語る。そこから感じ取れるものがある。何を隠そう、自分自身も震災後に初めて笑ったのがラジオで、オードリーのオールナイトニッポンもその中の1つだった。あと2つは、ナインティナインとサンドウィッチマン。
2番目に大きな特集、アニメについてでは、「まどマギ」や「けいおん!」からリアリティを感じ、社会的な評価を上げているアニメを分析する。「けいおん!」がなぜ人を感動させるのか。それは絶妙なバランスがあるから。
アニメは社会を包み込み始めている。アニメこそ、社会を映し出しているのかもしれない、というか、映し出していると改めて感じさせる。社会を知るなら、アニメを見る時代へ。
ももいろクローバーZの有安杏果さんの特集はファンにとってはたまらん。
後半のお笑い芸人たちのインタビューや氣志團とDJ OZMAの関係性など。綾小路翔がいろんな人と語り合う文章にも引き込まれる。
1冊900円+税以上で充実の雑誌です。クイック・ジャパンの文字を見たら、この巻でなくてもいいので、興味がある見た目のものに手を出してみて下さい。
【引用集】
若林正恭(オードリー)「わざわざウチらのラジオにチャンネルを合わせる人たちが、オードリーのありがたいメッセージとか感動のトークとか欲しがってるわけないと思ったんです。あのときラジオを聞いてくれる人たちには、ウチらの漫才を聴いてもらえるのが、いちばん良いのかなって。」(P30)
若林正恭(オードリー)「春日と漫才してるのが一番楽しいとか、いつまでもふたりでやっていたいっていう根源的な気持ちはどこかから借りてこなくても、僕の中にあるものだったから。」(P41)
吉田玲子(「けいおん!」脚本家)「映画でもアニメでも小説でも、フィクションの中の「リアル」って現実のリアルとはぜんぜん違うじゃないですか。だからそれはリアルっていうより「そういうことってあるよね」「こういうこと言うかも」っていう共感みたいなもの」(P122)
太田出版 ( 2011-12-10 )
ISBN: 9784778312923
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オードリー若林さんが本読みの時に泣いた事が表れた、心のつまった舞台だったと思います。 『芸人交換日記 [DVD]』
小檜山 歩
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