プロレスは新日本プロレスのものだけじゃない。パッケージとしてまとめてわかりやすく見せるだけがプロレスじゃない。プロレスはアスリートのものだけじゃない。
そんなことを方舟の天才と呼ばれる丸藤正道は伝えたかったのかもしれない。その裏にはケニー・オメガを先頭にアスリートプロレスをひた走る新日本プロレスが裏にあるのかもしれない。
新日本プロレスの勢いが止まらない。会場に行ってるわけじゃないけど、夏の大きなイベントであるG1クライマックスも両国国技館3連戦は初日はそこまで売れなかったけど、2日目と最終日はフルハウス。
そんな中で両国国技館で試合をできるプロレス団体の代表格であった全日本プロレスとノアが両国国技館で試合をできない日々が続いている。新興団体であるDDTやデスマッチの大日本プロレスにも遅れをとっているようにも見える。
そんな中でノアの申し子とも言える丸藤正道が逆襲を見せた。それがこの大会。
個々のプロレスラーの素のキャラクターを楽しみ、なんでもありで人と人の価値観・気持ちのぶつかり合いを見せるプロレスを見せていた。それは新日本プロレスが少しずつ離れつつあるプロレスともいえる。
プロレスラーの素のキャラクターを楽しむプロレス
誰が誰と仲がいいとか、誰が誰の子供とか、師匠と弟子の関係とか、団体同士の関係性とかのコンテキストをプロレスは大事にしてきた。そのよくわからなさがプロレス初心者にとっては入りにくくて敬遠される理由にもなっていたのかもしれないけど、昔からのプロレスファンはそれを語ることも含めて楽しんできた。
力道山の息子である百田光雄がおじいさんだけど戦ったり、元々は空手家だった齋藤彰俊と越中詩郎の平成維震軍だったりと昔の懐かしさを感じる選手が出てきた。
一番は越中詩郎のヒップアタックだろう。お尻で攻撃なんて…と思われるかもしれないけど、それで会場は盛り上がる。そんなキャラクターを楽しむプロレスがあった。
ハチャメチャでなんでもありのプロレス
強いでかい男たちが普通の人じゃできない戦いをするのがプロレスだった時代はとうに過ぎてなんでもありになっている。ヒーローキャラの小峠篤司、ジャケットを着ながら戦う黒潮イケメン二郎も出てきて盛り上がる。
そんなハチャメチャの一番はゲイレスラーの男色ディーノ。男性の観客にキスをしながら入場してくるとんでもないキャラクターを持つDDTの選手も出てきた。
写真は地獄門という技で男色ディーノの肛門に吸い込まれて呼吸困難になる技…なんですが、書いている自分も何を書いているのかがわからなくなったりもします。
そんなハチャメチャさが随所に盛り込まれてました。
人と人の気持ちがぶつかり合って戦う
新日本プロレスにも棚橋弘至がイデオロギー闘争として未だに根付かせているプロレスに対する価値観をぶつけ合うような戦いは残っているけど、ケニー・オメガはそれを超えたアスリートプロレスという言葉を生み出した。
体を鍛え抜いてとんでもない動きを繰り出し続けることで観客を熱狂させる。そんなプロレスがこれからのプロレスの形になるのかもしれない。でも、丸藤正道が大切にしているのはそれじゃないというのがメインイベントのカードからもわかる。
メインイベントは丸藤正道VSイタミ・ヒデオのシングルマッチ。特に仲が良いわけではないけど全日本プロレスの四天王プロレスを引き継いでそれを超えるプロレスを見せてきた丸藤正道とKENTAが再び戦う。ノアに残った丸藤正道に対して世界最大のプロレス団体であるWWEに移籍したKENTAがイタミ・ヒデオに名前を変えて帰ってきた。
イタミ・ヒデオが入場したとき、丸藤正道と向き合った瞬間の空気感は観客は本当にこの試合を見に来たんだということが伝わるには十分すぎるぐらいだった。試合内容で昔を超えたかといえばそれは置いておいて、でも、今を見せていた。
2人のストーリーを踏まえた上での今の試合というのを強く感じさせた試合だった。
この大会にはノアを退団して全日本プロレスの社長になっている秋山準が杉浦貴と再戦したり、プロレス界に復帰が決まっている森嶋猛が来場したり、最強だった頃のノアジュニアにいた鈴木鼓太郎がノアジュニアに喧嘩を売ったりと人と人の気持ちがぶつかり合うプロレスらしいいろんなことがありましたわ。
丸藤正道というプロレスラーはそんなに好きではなかったんだけど、行ってよかった大会でした。
【アルバム】
小檜山 歩
最新記事 by 小檜山 歩 (全て見る)
- 外敵・Sareeeが王者・岩田美香を完封しても仙女の怪物がやってきた センダイガールズプロレスリング 後楽園ホール大会2023年11月5日 岩田美香 VS Sareee - 2023-11-06
- つばきファクトリーの初めての卒業コンサートで浅倉樹々の偉大さを感じた「Hello! Project ひなフェス 2023 つばきファクトリー プレミアム ~浅倉樹々卒業スペシャル~」(配信) - 2023-04-05
- 自分はJuice=JuiceとBEYOOOOONDSが好きなんだなと。そして、かみこすごかった!「Hello! Project ひなフェス 2023 Juice=Juice&BEYOOOOONDS プレミアム」(配信) - 2023-04-04