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もしかして初めて人類が行くとすればこんな世界の頃なのかもしれない『ドーン』(平野啓一郎)

1969年にアポロ11号が月面着陸をしてから50年以上が経っている今は月旅行が現実のものになりつつある。月の次に人類が行くことができる場所として火星があるのかもしれないが、まだ、火星へ近づくことすらできていない。そもそも火星に行く必要があるのかという話があるのかもしれないけど、そんなプロジェクトが成り立つときにはこんな状況なのかもしれないと思わせる近未来小説だった。

NASA主導の火星への有人探査PJである<ドーン・DAWN>によって人類が初めて火星に降り立ったプロジェクトとそれが社会にどのように捉えられ、その頃にはどのような社会になっているのかということが記されている。ドーンのプロジェクトメンバーの一人であり、日本人の外科医である佐野明日人を主人公とし、地球に帰ってきた後に他の宇宙飛行士と同様、様々な場所での講演などをしていくのだけど「本当のこと」を話してほしいと折に触れて言われるのはドーンというプロジェクトが様々な思惑が絡んでいたことを予期させる。

ドーンのPJ成功後のアメリカ大統領選挙や東アフリカ戦争、ドーンにまつわるスキャンダルが世界で大きく取り上げられていく顛末が宇宙開発が政治とつながっていることを改めて感じさせる。近未来の描写として「散影」と呼ばれる仕組みであったり、「動く顔」という整形のやり方だったり「分人主義」と「個人主義」というような考え方だったりと技術の発展によってもたらされる様々な進化がリアリティを感じさせる。

政治家が国民に対してどのような考えて行動しているのかが垣間見えるセリフもあって今の政治を重ねる部分もあって興味深い。遠い未来ではなくて生きている間に訪れるかもしれない近い未来を感じさせるSFが読みたい人におすすめ。

【手に入れたきっかけ】

話題になっていたので気になって買ってみた

【オススメ度】

★★★☆☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。