多分、バンコクに居たら読まなかった。この現実は確かにあるだろうけど、触れてこなかったしこれからも触れないであろうバンコクの物語。
タイに住む67,400人の日本人の中で最も収入が低いのは…
バンコクでトレーニーとして働いています。一応、日本の大手企業に勤めているので駐在員に近い扱いを受けてたりします。一応、他の企業で働く日本人と会うこともあったんだけど、なんだかウマが合わずに(元々、友達も少ないのでそうなった気もしますが)休日は会社の同僚の人たちと出かけるか1人で過ごすことが多いんです。
そんな日々を送ってますが、遅かれ早かれ日本に帰ろうと思ってます。でも、日本に帰らない人もいる。2015年時点でタイには67,400人の日本人が住んでいる。そんな日本人の中で恐らく最も収入が低い職業がこの本で紹介されているコールセンターで仕事をしているような人たち。
確かに会ったことがなかった。そんなコールセンターの人たちを取材したルポルタージュ。
日本社会に適応して、出世するとか家庭を持つとか、そういうレールに何の疑問も持たずにすいすい世の中を渡っていける人はここにはいない
そんな人達が働いているがバンコクのコールセンター。海外だけど、日本語ネイティブで性別・語学力不問、高卒の22歳以上で求人が出ている。そんな職場。日本人の最低賃金は月5万バーツだけど投資奨励恩恵によって3万バーツほどの賃金で雇うことができる。
バンコクは月収10万円で生活ができる…?
3万バーツは日本円だと10万円ぐらいだけど、基本的に物価が日本の3分の1(ペットボトルのジュースが20バーツ≒65円)ぐらいのバンコクなので、暮らすことができる。彼らはなぜ、バンコクに来て働いているのか。
物語が始まるのはトレーニーが始まった頃に通っていた語学学校の近くにあるターミナル21と呼ばれる商業施設。各階が別々の国の都市をイメージして作られているこの建物は観光客の撮影スポットだったりする。自分が行ったことある場所、それも頻繁に行く場所が出てくるのにはドキッとする。
最初に紹介されるのは28歳の女性で売春で買った男性の子どもを妊娠した女性、他にもラオスで日本料理屋を開いた女性、成功して起業した男性、ワーキングプアとして貧困にあえぐ男性、家族で夜逃げしてバンコクに来た両親の子どもなど。みんな日本人。
日本でも貧富の差はあるけど、バンコクのそれは日本よりも大きい。未だにバンコクの至る所では乞食が声をかけてくる。それは日本人の中でもそうなんだろう。駐在として何千万の給料をもらって日本と同じかそれよりも高い金額の料理を食べている駐在員からコールセンターの職員まで。
働いていても生活が苦しい人のことをワーキングプアと呼ぶけど、そんな日本人がバンコクにもいる。海外で働く人はおしなべて優秀でリッチな生活をしているだろうという考え方を厳しい現実に対する取材から覆してくる。
日本よりもまし?日本に帰らない人たち。私は…
彼らが日本を出た理由はそれでも日本よりは”マシ”だから。その理由は確かにそうなんだろうと感じる部分もある。でも、私はそうはならない。いつか日本に帰る。タイに居場所がないわけじゃないけど、日本にも居場所があるから。
こんなまとまりのない感想になるのは社用車を使って勤務先に行って休日はゴルフしてカフェでのんびりしてからタイマッサージを受けている自分がそれでいいのかと思うからなんだろう。
このモヤモヤは大学生の時に感じて消化すべきことだったりするんですかね。あんまり海外に行かなかったというか目にしていたけどその問題を解決するような活動もしてなかったからですかね。
仕事はしてるけど、恵まれた環境で会社に守られて生活してる自分。このままでいいのかと思ったりもする。そんな気持ちを突きつけてくるってことはいい本なんでしょう。バンコクにいるからこそ現実感が更にあるのかもしれない。
そんなことを考えてるけど多分、帰る。正しくないかもしれないけど。
セクシャルマイノリティ(セクマイ)に寛容だと言われているタイの社会が寛容ではない部分もあってセクマイの中には海外に行く人もいる現実にも驚きました。
【次の本】
『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』(水谷 竹秀)
作者の別のノンフィクション!
『アジアン・ジャパニーズ』(小林紀晴)
一昔前に流行ったらしいアジアをさまよう若者たちのルポルタージュ。知らなかったっす。
『Bangkok Boy』(Chai Pinit)
筆者が取材した1人のバンコクのゴーゴーボーイ(体を売る男性)の半生のノンフィクション(英語版)。けっこう話題になったみたいです。
【手に入れたきっかけ】
いくつかの新聞などで紹介されていてバンコクに住んでいたので気になったので
【オススメ度】
★★★★★(オススメというか、読んでいて心に突き刺さってきたので)
小檜山 歩
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