高校球児にとって高校野球が全てではない。試合が終わったあとも人生は続く。そして、人生に高校野球は生きている。高校野球は多くの人を惹きつける。
若さと不完全さ、野球のどんでん返しの生みやすさが絡みあうからだろう。今年の夏に星稜高校がやってのけたように、あと少しで試合終了からの大逆転を行うことが野球は出来る。
同じスポーツでもサッカーでロスタイムに入った時に0-8だったら、万が一にも逆転はない。でも、野球ならあり得る。なぜなら、野球には制限時間がない。そして、勢いによって試合の流れが大きく変わってしまう。
クラブチームに入ってるようなエリートではなく、高校に通い、昔の自分たちと同じように普通に授業を受けている高校生が甲子園でプレーをして、ミスをして負けて崩れ落ち、若さあふれる躍動感を見せる。気取らずに泥んこになってプレーをする高校生が居続ける限り、高校野球は終わらない。
高校野球がむき出しな一冊。甲子園に出場したチームの9人の「四番、ピッチャー、背番号1」のその後を追う。とはいっても、プロ野球で活躍した選手どころか、名前も知らない選手がほとんど。でも、確かに高校野球があり、高校生の頃に野球に向き合ってきた男子たち。
松井秀喜を敬遠したチームの背番号1、マウンド上で剥離骨折しても投げ続けた背番号1、沖縄のいろんなものを背負ってプレイをした背番号1など。派手じゃないけど、むき出しの若さがそこにはある。
高校野球で得たものは確かにその後の人生に生きている。そんなことが感じられる9人の生き方。
【キーワード】
星陵VS明徳義塾
松井秀喜への敬遠
肥満化した高校野球
カメラマン
PL・中村順司監督
栽弘義・沖縄野球
甲子園・PL・KKコンビ
川崎製鉄神戸
【引用】
三回戦までの七日間に宿舎の旅館にかかってきた嫌がらせ電話は一五〇〇本にのぼり、旅館側は電話番号を変えた。もちろん、「リスクを負ってまで勝ったのだから胸を張れ」という激励の手紙も届いたが、岡村たちは練習以外の外出も控え、学校側は報道管制も敷いた。
「スタンドは騒然とした雰囲気になるだろう。だが、それに動揺してはならない」
〝明日〟という言葉には、無限の希望が詰まっている。だが、一夜明けて〝今日〟と名前を変えると、切ないほど現実的な姿になって目の前に現れる。その〝今日〟をどう生きていくか。それは一対〇の勝負に似ていると思う。
甲子園に何回出たか、あるいは何勝しているか。それだけが高校野球で監督をする者の価値ではないはずですから
『甲子園の大敗を引きずるな。前を向いて頑張れ』 甲子園という舞台は、必死にプレーする球児たちを、残酷にも僅か二時間余りで勝者と敗者に分けてしまう。にもかかわらず、多くの人々が精一杯の声援を送り、感動に涙するのはなぜか。 それは、甲子園という舞台が、藤原のように壮絶に敗れ去った者たちを、人生の勝者を目指すスタートラインに立たせてくれるからなのだ。
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小檜山 歩
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