もともとは1951年の作品ということは60年以上前に書かれたものなんだけど、今、書かれたと言われても違和感がない。SFにありがちの未来予測が当たってすごいとかとっても外した未来予測ってことでもない。破滅SFと呼ばれる物語。
ジョージ・オーウェルの『1984年』とは違うんだけど、どこか似ている部分もある。
おかしい。なにかがおかしい。
とある出来事によって世界の大半の人たちの目が見えなくなり、人間の利益追求によって生かされていた人を殺せる植物がゆっくりと人を殺していく。1対1で油断せずに対峙していたらやられることのない植物でも目が見えないことで人間が圧倒的に不利になる。
イギリスのロンドンでこの出来事に相対したのは人を殺すことができる植物であるトリフィドの研究者の男性。この男性視点で物語は進み、イギリスを舞台に進むんだけど、同じ事件が全世界で起きているのだろうと思わせる。
60年以上前でPC、スマホ、ネット、IoT、AIなんかが表には出てきていない時代に文明がなくなる。でも、今日を舞台に同じことが起こったとしてもこうなるんだろうと思わせる。なぜなら目が見えなくなることによって前に挙げた多くのツールを使うことができなくなるし、サービスを提供する人たちの大多数が目が見えないことによって目が見える圧倒的少数者たちもそのサービスを利用できなくなる。
そんなどうにもできない状況の中で目が見える人たちと見えない人たちが生きていく。目が見える人たちの中にある人を助けないといけないという気持ちが全員を助けることはできないという気持ちに序盤であっさりと打ち負かされることが大多数が取る行動を示している。
優先順位をつけざるを得ないし、目が見える人同士で生きていくことになり、見える人と見えない人で自然に階層ができていく。いつかの時代に逆戻りするのか新しい生活様式を作り上げていくのか。それぞれの考えで人が新しく生き始める。
今の世界にこれだけの変化が目に見えて起こることはないかもしれないけど、ゆるやかでも状況によってルールは変わるし、変わるルールに乗り遅れるとどうなるのかを突きつける。
自分勝手な人間に対する自然の逆襲と読むこともできるのかもしれないけど、それ以上にどんな状況になろうと生きようとする人間の最初の欲求がここにある。
【手に入れたきっかけ】
「本が好き!」というWEBサイトの献本キャンペーン!
【オススメ度】
★★★★☆
小檜山 歩
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