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机の上に収まるゲームが世界を侵食していく『盤上の夜』(宮内 悠介)

出かけることができない休日にはパートナーとボードゲームをすることが多い。ボードゲームにはある程度の運要素がありつつその中で戦略を組み直していてどうにかして相手を倒すことを目的にするゲームに面白さを見出すことが多い。それは将棋や囲碁のような運要素の入る余地が少ない100%ガチで対戦する必要があるゲームで疲れたくはないという自分の感覚もあるのだろう。

この本で取り上げられるのは余計な要素を必要な限り排除した相手との実力を本気で競い合うゲームがほとんど。囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋で最後に囲碁が戻ってくる。

それぞれが違う話なのだが共通点は実際に現実に存在するボードゲームが物語の中心に据えられているということであり、出てくる人が机の上に収まるゲームがそれぞれの人生を侵食しているということだろう。

どんなゲームであっても取り組む人間には思想がありゲームの内容や結果とは切っても切り離せないような関係性がある。人が意思を持ってゲームにこれでもかというぐらい向き合っている姿がたまらない短編集。

タイトルにもなっている『盤上の夜』では四肢がない棋士が出てくる。そんな棋士の力の源泉はししがないことによるとある感覚であるというのは他の著者だが『脳のなかの幽霊』でも取り上げられた幻肢の話を踏まえるとアリエルのかもしれない。そんなときに打ち手がどうなっていくのかに引き込まれる。

笑い死にってホントに起こる!?『脳の中の幽霊』(V・S・ラマチャンドラン, )【本】

登場人物の魅力で言うと『人間の王』だろうか。チェッカーと呼ばれる完全解が見いだされてしまったと言われているゲームにおける人間で最強だった人物とそれに挑戦したプログラマの戦いは今の将棋での コンピューターと人間との戦いにも繋がる話になっている。プログラムの作りとして今と昔で大きく異なり、この時代にプログラムによって人を倒そうとしたプログラマーが考えていることの深さに惹かれる。それに相対するどうにかして強い相手と戦いたいと願い続けた「人間の王」であるマリオン・ティンズリーにも惹かれていく。

物語の中で出てくるゲームの戦いの面白さでいうと麻雀を取り上げた『清められた卓』であり、負け続ける中でも風呂であり続けたプロ雀士が大きな大会で出会った3人のアマチュアの打ち手の異様さにどのように戦い、試合によって四人がどのような人生に進んでいくのかということが描かれている。試合の展開自体を細かく描いたのがこの話だということもあるのかもしれないが、登場人物の魅力もあって一番お気に入りかもしれない。

【手に入れたきっかけ】

そこそこ有名なSFで気になって

【オススメ度】

★★★★☆

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。