本当にいい大会は余韻を感じて、こんな大会を見たいから次にプロレス観戦する日を調べることになる。そんな大会であり、女子プロレスがプロレス界の中心になった一日だった。
いい大会に巡り合うことはいい試合にめぐりあうよりも難しい。同じような試合だと飽きてしまい、1ついい試合があるとその後の試合がイマイチに思えてしまったり、メインの試合がそこまでじゃなくてスッキリしなかったり。でも、途中の試合がイマイチだったなぁと思うこともあったりする。
女子プロレスラーたちの戦いに酔いしれた
女子プロレスとしては久しぶりに日本武道館で開催された『レック Presents スターダム10周年記念~ひな祭り ALLSTAR DREAM CINDERELLA~』は”本当に”いい大会だった。それぞれの試合が違った色を出していった。
一番見たかった試合は久しぶりの再会であり、スターダムの1期生同士である岩谷麻優選手と世志琥選手の試合で、試合全体を通して重みのあり、その後の所属同士の2試合が超えられないかもしれないと思ったのもつかの間、未来を見せた林下詩美選手と上谷沙弥選手の「バトル」とメインイベントの「決着戦」である中野たむ選手とジュリア選手の試合が終わったあとにはなんとも言えない幸福感に最後は包まれて中野たむ選手が「髪を切らなくていい」と言った言葉に対して本当にその通りだと思わせるような試合だった。切った上でのリング上のやりとりから中野たむ選手の締めまで女子プロレスラーたちの戦いに酔いしれた。
プロレスの神様がいるなら
プロレスといえば男子が中心であり、女子の試合は男子と比べると地味とか盛り上がらないと思われる人もいるのかもしれない。決してそんなことはなく、痛みが伝わりお互いのこれまでの思いや気持ちを伝える力は男子のプロレスを余裕で超えていってしまっているように見える。それは(たまにはかっこつけるのだけど)カッコつけず、自分の心をリング上で全て吐き出そうとすべきという考えが女子プロレスの中に根を下ろしているからなのだろう。
プロレスの神様がいるならこの日だけはこの日本武道館のリングの上に立っていたと思える興行だった。ハイスピード選手権は「熱戦」でなつぽい選手がやっと結果を出すという結果になり、タッグは「一戦」と表せる2対2の魅力があり、オールスターランブルは「祭り」で盛り上がり、渡辺桃と高橋奈七永の「決闘」、朱里と小波の「ファイト」、岩谷麻優と世志琥の「歴戦」 、林下詩美と上谷沙弥は「バトル」、ジュリアと中野たむの「決着戦」と8色のそれぞれの戦いだった。それぞれの試合については別に書きたいと思うけど、どの試合が良かったというよりもどの試合もよかった。同じような試合が少なく、様々な戦いがひとつのリングの上で繰り広げられていた。
振り切るほど蒼い蒼いあの空
何回か涙が頬を伝うシーンがあった。岩谷麻優選手と世志琥選手の試合で、ハプニングによってスターダムを離れた世志琥選手が帰ってきて唯一スターダムに 残っている同期と戦う。試合前の入場での緊張感、リング上でのやりとり、試合の濃密さ、試合後の交わりの全てに心を揺り動かされてしまった。ハイライトの一つが煽りVTRでいきものがかりの「ブルーバード」が流れなから二人の関係性を振り返る時間であり、岩谷麻優選手のカラーである青に重ねた曲の中でこんな歌詞があった。
飛翔(はばた)いたら 戻らないと言って
探したのは 白い 白い あの雲
突き抜けたら みつかると知って
振り切るほど 蒼い 蒼い あの空
スターダムで戦い続けている岩谷麻優選手が探し求めているプロレスの試合がこれだったのかもしれないし、まだまだ先があるのかもしれない。女子プロレスが羽ばたいていくきっかけとなる大会だったと思うし、そうなってほしい。
2021年3月3日 『レック Presents スターダム10周年記念~ひな祭り ALLSTAR DREAM CINDERELLA~』 スターダム✪STARDOM
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小檜山 歩
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