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高校生と中学生に語らせている、こんなふうに今の若者は考えているのかも。悪くない、と思える2つの文章。 小畑 健『バクマン。 1』・石田 衣良『約束』 冷めた中の熱さが大きな熱さになるときが来て欲しい!

「最近の若者は…」大昔からあるこのセリフ。22でおそらく若者に入る自分が「あ!平成の若者ってこんなことを考えるのかも。」と思えた2つの文章がある。1つはマンガの高校生男子2人の会話、2つ目は小説で1人の中学生男子の回想。悪くない思考回路だと思うし、これが今の熱さなんじゃないか。熱血ではないけど、熱さがある。
まずは、1つ目。
『バクマン。 1』(P79~83)

サイコー(高3)<以下、サ>:おまえ、クラスの奴みんな馬鹿に見える?
シュウジン(高3)<以下、シ>:えっ
サ:クラスで一番頭いいと思ってる?
シ:なんだよ急に。嫌な質問だぞそれ
サ:って事は思ってんだ?マンガ家ってやっぱ頭良くないとなれないって思わない?
シ:! 思う。少なくとも馬鹿じゃ無理って思ってる。そうか。そういう意味で聞いたんなら答える。勉強ができるイコール頭いいとは思ってないけど、クラスで3番には入ってると思う。
サ:3番?結構謙虚だな。上に入るかもしれない二人って誰、俺には見当たらない。
シ:サイコーと亜豆(ヒロイン・サイコーが好きな女子)
サ:はあ?やっぱり、おまえ馬鹿だろ・・・・
シ:サイコー頭いいって。同じクラスになって、2か月も経ってないけど見てるだけですぐわかった。俺だって絵が上手いだけじゃ誘ってない。頭もセンスも必要。そう思った上で誘ってるんだ。大体「クラスの奴、馬鹿に見えるか?」って質問、サイコーがクラスの奴馬鹿に見えるから出る質問じゃん。
サ:(・・・・・・やっぱ、頭いいな、こいつ。)まあいいや、俺の事は置いといて。亜豆頭いいかぁーっ、なんかちゃんと勉強してそうで中の上位だろ。それに、声優目指してますって・・・アホじゃね?
シ:亜豆は勉強してるフリしてるんだと思う
サ:フリ?
シ:本当の馬鹿って必死にノート取って先生に質問して帰っても勉強してるのに下の奴だろ。
サ:ああ、まあ・・・
シ:亜豆は計算じゃなく、素で女の子してるんだ。
サ:? 意味わかんねーよ。わかり易く話せよ
シ:なんていうのかな、おしとやかに行儀よくしてるのが女の子らしい。それが一番ってのが自然に身についてて、女の子だから、真面目な方がいいけど、勉強は中ぐらいでいい。出来すぎても可愛くないって感覚、生まれつき持ってるんだ。それって賢いってことだろ。
サ:う~ん。深読みし過ぎじゃね?
シ:じゃないよ、亜豆は頭いいからあんなに魅力的なんだ。亜豆の家見たろ。親、何してるのか知らないけどあんな家、何かに長けてなきゃ建たない。それとも悪事働くか、悪事してても捕まってないんだからすごいじゃん。血だよ血。
サ:また血かよ。父親が出来る人だからその子供も頭いいか・・・、単純な発想だけど親ってのはあるよなー
シ:俺、1万円札好きだけど、福沢諭吉嫌いでさ。“天は人の上に人を作らず、人の下に人をつくらず”なんて書いちゃって『だったらいいのにね』とちゃんとつけろって思う。
サ:はは、わかるよ。人間つくってるの天じゃなく親だし、生まれた瞬間から親だけでどんだけ差が生じてるんだって。
シ:声優目指してるのだって、今の女の子にありがちな夢を自然にチョイスしてその夢見る乙女を最大限に楽しんでるくらいにしか思えない。俺達みたいに、将来とか切羽詰まったものは何も感じてないよ。
サ:女の子だから?
シ:そう「女の子だから」がわかってるんだ。可愛いお嫁さんになるのが女の一番の幸せって生まれながらに思っている。それまでは、いや、結婚しても女らしくおしとやかに可愛く。それが計算じゃないんだからクラス一勉強できる女、岩瀬より100倍頭いい。サイコーだってどんな可愛くても馬鹿は嫌だろ。反対に岩瀬だって見た目も悪くないけど、好きになれなくね?確かに女で一番成績がいい。それが誇らしげな性格が嫌だ。馬鹿だとさえ思う。

おととしに出た一巻で、今でも続いている。アニメにもなった人気のマンガで、マンガ家を目指すことになり、タッグを組む“サイコー”と“シュウジン”の会話。何も知らない、周りを見ていないように思えるかもしれないけど、周りをしっかり見ていて、実はいろんなことを考え、自分の考えを持っている。
もう1つの文章。
石田衣良 『約束』・「夕日へ続く道」P143

いけないのは、きっと考え過ぎてしまうことなんだろう。クラスのみんなのようになにも考えなければいいのだ。なぜ誰もが同じ制服を着ているのか。なぜ学校指定のカバンをもたなければいけないのか。なぜ四十の机が同じ方向をむいているのか。勉強は別に嫌いではなかったから、授業は気にならないが、なぜ昼休みになるとみなで同じ食器をつかい、同じメニューの給食をとらなければらないのか。そうした疑問が頭の隅をかすめるたびに、雄吾は理由もなくへらへらと笑ってしまうのだった。

小説の中の不登校の中学一年生の男子が学校に行かない理由がこれ。冷めている中でも考えている。
こういう学生を教育するほとんどの人達、今の30代から60代が中学生とか高校生だった時にこういう考え方を持つ人はいたのだろうか。昔は「頑張れば裕福になる」時代だった。この人たちはすべこべ言わずにやることが望まれていた時代だったんじゃないか。
やっぱり身の回りの環境で子どもは変わっていく。そして、こういう考え方を折らずに突き進んだ人が増えてきたら、日本は変わるのかも。今は過去の遺産の影響が大きいし、それに反する試みをしてもいろんな手で押しつぶされてしまう。でも、昔の、熱さの上の熱さじゃなくて、冷めた中の熱さが大きな熱さになるときがあるんじゃないか。なんてこの2つの文章から思う。「すべこべ言わずにやる」んじゃなくて、いろんなことを考えるからやる楽しさや大切さを感じた。たぶん、お年寄りには反感を買うのかも、と思うけど。
これを大きな力にしていけばいい。たぶん、そんな時代になってほしい自分がいる。今の“変わり者”が“普通”になれる時代に。

石田 衣良
角川書店 ( 2004-07-27 )
ISBN: 9784048735490

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。