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新しいミステリへの挑戦は失敗に終わった古いミステリー G・M・マリエット『ミステリ作家の嵐の一夜 (創元推理文庫)』

(ネットの献本サービスで頂いた一冊です)

「第一部イギリス」と「第二部 アメリカ」を除くと、ほとんどがスコットランドのホテル、ダルモートンキャッスルでの話。一堂に集められたミステリー作家と関係者たち。集められた理由は彼らの交流会である病院到着時死亡(デット・オン・アライバル)会議のため。

そこで良くも悪くも話題の中心になっているのはデビュー作で会議に参加する誰よりも成功を納めた若手女性作家のキンバリー・カルダー。きらびやかでなんでも自分が1番だと思っているように見える彼女。

集まりの華やかさとは逆でウラでは同業者の妬み、嫉みにあふれている。そんな中、当然の如く彼女は殺される。ここからミステリが始まる。誰が、彼女を殺したのか。ミステリとしてだけでなく、業界の裏側も描いた一冊。

本格ミステリという伝統とチックリットと呼ばれる女性向けの軽いミステリの対比が描かれる。昔ながらのミステリは売れなくなり、軽いミステリが売れるようになった。

デビュー作が売れたキンバリー・カルダーの作品は後者のもので、昔ながらのミステリを描いている人にとってはミステリではないと批判され、古いものを変えるべきと思う人からは「五十七ページまでに死人を登場させなきゃ。七十ページ目じゃ、絶対に遅すぎる」、「殺人は最初の五ページ以内で起こるべきだよ。さもないと、読者たちが興味を失ってしまう」という言葉が出てくる。

そして、この本自体は141ページまで死体は出てこないし、登場人物を細かく描写する本格ミステリのジャンルに属するもの。本格ミステリの中で本格ミステリは売れないとしている1冊。これは作家から軽いミステリへの挑戦状なのかもしれない。

ただ、挑戦は失敗に終わったように見受けられる。死体が出てくるまで退屈だし、謎解きもピリッとしない。

これから出版するにはせわしない今の時代に合った軽いミステリが流行り、本格ミステリは本当にすごい作家がすごい作品を書かないと読まれないと感じさせた1冊。☆2つ。ちょっと読んでいて残念でした。

G・M・マリエット
東京創元社 ( 2012-10-30 )
ISBN: 9784488221041
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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。