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心の熱さが収まらない傷だらけの宴 ~5.2 FREEDOMS 葛西純、杉浦透 VS エル・デスペラード、ビオレント・ジャック~(流血写真注意)

※選手の流血写真を掲載しているため、苦手な方はご注意ください

とんでもないものを見た。帰りの後楽園ホールの階段でも、電車の中でも、家についても頭の中の熱さが止まらない。脳がオーバーヒートしている感覚をプロレスで感じたのはいつぶりだろうか。いや、これまで感じたことがないほどの刺激だったかもしれない。そんな夜であった。

金曜日の仕事を終え、5月2日の夜に向かうのはFREEDOMS後楽園ホール大会。 エル・デスペラードがFREEDOMSのリングに上がり、5月2日の大会に参戦すると決まった時に買ったチケットを握りしめて後楽園ホールへ足を踏み入れた。代々木第二体育館でのエル・デスペラードと葛西純の試合をNJPW WORLDで見て、いつか生で観たいと願っていたエル・デスペラードと葛西純の邂逅。バーブクレフェスには行くことができず、ハードコアでのデスペとクラーク・コナーズのIWGPジュニア王座戦に痺れる中で、デスペが再び葛西純と交わるというのなら行かねば、と購入したのがこの日のチケットだった。

エル・デスペラードとクラーク・コナーズの試合

エル・デスペラードのカードはメインイベント。 前々から組んでみたいと話していたビオレント・ジャックとタッグを組み、葛西純と現FREEDOMSのデスマッチ王者である杉浦透と対峙する。札止めにはならなかったものの、普段のFREEDOMSの後楽園ホールよりも明らかに多くの観客が詰めかけた後楽園ホールだった。第0試合は時間の都合で見ることができず、大会オープニングから会場の北側の前のほうの席に座ってメインイベントへの期待を高めつつ、FREEDOMSの試合に没入していった。

大会の盛り上がりの中で竹田誠志と平田智也が持っていったセミファイナル

大舞台のメインイベントで怪我をして復帰してからどのようにリングの中央に立つのかが問われている平田智也が、大きな体に最低限のコスチュームをつけるだけのむき出しの肉体で竹田にぶつかり、椅子の上へのボディスラムに始まり、机への投げ飛ばし、ミサイルキック、有刺鉄線ボードを竹田の上に被せてのリバーススプラッシュと立て続けに攻撃を放って竹田を追い込んでいく。

平田智也のミサイルキック

竹田も負けじと凶器と体を使って平田にぶつかっていくと平田の流血の量が増えて金髪だったはずの平田の髪が血によって赤く染まっていく。 そんな平田が放つ重爆ミドルキックの威力は後楽園をどよめかせていた。そんな平田に対して竹田は椅子を顔面に打ち付ける顔面整形を見舞うも、平田はラダー上から椅子に向かっての雪崩式ブレーンバスターで応戦し、勝利への執念を見せる。走り込んでの大迫力のラリアットが決まったときには、この技で決まっても誰も文句はないのではないかという説得力があった。

平田智也のラリアット

ただ、勝負を仕掛けたムーンサルトプレスを避けられたのが痛恨で、そこから竹田の脳天への椅子のフルスイングを受け、爪楊枝ボードを置いた上でのトップロープからのローリングセントーン、国体1回戦スラムからのリバースUクラッシュで決着、竹田の防衛となった。

竹田誠志のリバースUクラッシュ

平田の奮闘が会場を熱狂させ、この試合がメインイベントでも誰も文句はないのではというような試合で、観客が疲れてメインイベントがどうなるのかが心配になるような試合だったと同時に、平田のデスマッチロードの再進撃が始まる予感を感じさせるセミファイナルだった。

そんなセミファイナルを終え、メインイベントの蛍光灯の準備が進むと選手入場となる。 この試合は選手入場から意味を感じるシーンがあった。

意味を感じる4人の入場

まずはビオレント・ジャックの入場曲が流れ、ジャックが登場する。 1人ずつの入場になるのかなと思いながら、ジャックの入場を見ていた。まだ、ジャックがリング下にいる中で聞き覚えのあるアコースティックギターの音色が流れ出す。デスペラードの入場曲に変わり、デスペも現れる。ジャックもデスペもそれぞれのマスクを混ぜ合わせたハーフマスクを着用しており、2人が互いに敬意を払いタッグを組んでいるのだと感じさせる場面で、2人一緒にリングインした。デスペの曲が流れた時には、セミファイナルの声援に決して劣らないデスペコールが起こった。

それぞれのハーフマスクをつけるエル・デスペラードとビオレント・ジャック

次に流れたのは男性のシャウトで始まる曲。 葛西純が入ってくる。すぐに大・葛西コールが起こる。FREEDOMSのリングであることもあり、デスペコールよりも大きな葛西コールで一気にメインイベントへの期待が高まっていく。葛西はコールを味わっているのか、デスペとの試合への高揚を感じているのか、じっくり時間をかけて入場しリングの上に立つ。そして、杉浦透の入場曲が流れる。今のこのリングの一番上のベルトを持っているからこその最後の入場であり、デスペが対戦を望む葛西よりも杉浦が後に入ってくることも試合の内容に関わってくるだろうと思いながら、杉浦の入場を見届けた。

メインイベントということもあり、入場後にそれぞれの選手コールがあり、バーブ佐々木レフリーを中心に戦う4人がリング中央に集まると、デスペが葛西に近づいて「自分が始めた戦いであり、あなたを倒すためにこのリングに来た」と言いながら先発を申し込む。 このままデスペと葛西で試合が始まると思いきや、そうはならないのが面白いところで、FREEDOMSのベルトを掲げた杉浦が割って入ると、デスペも持ってきたIWGP Jr.ヘビーのベルトをぶつけて応え、デスペと杉浦の組み合わせでゴングが鳴る。

新日本プロレスの強さを見せようとするデスペラードと受けて立った杉浦透

ゴングが鳴ると、デスペがエル・デスペラードになる前の前世の話なのか「若手通信以来ですね」と言いながら組み合うと、蛍光灯がロープに巻きつけられているリングの中でオーソドックスなバックの取り合いから腕の取り合いの攻防を見せる。 新日本プロレスのジュニアの頂点に立つデスペらしい仕掛けの中で、杉浦は一歩も引かずに受けて立つ。デスペが一枚上手を行くようにも感じる中で、杉浦も食らいついていった。

エル・デスペラードが杉浦透の腕を取る

杉浦が的確にデスペの動きに対応することで、杉浦のレスリング技術の高さが際立つ攻防が続く。 すでに楽しげな表情を見せるデスペと杉浦が額をぶつけ合うと、デスマッチらしく4人が蛍光灯を手に取る。入り乱れての攻防を制したのは葛西と杉浦で、葛西がデスペに、杉浦がジャックに蛍光灯を叩きつけて最初の蛍光灯攻撃を仕掛けると、場は一気に蛍光灯での攻防へと移行する。デスペラードとジャックがロープに括り付けられた蛍光灯に打ち付けられると、葛西と杉浦もドロップキックの勢いで同じくロープの蛍光灯に叩きつけられ、デスマッチの色合いが一段と濃くなっていく。

リング上の攻防が葛西とジャックに移ると、葛西が持ち込んだ十字架カミソリボードを巡る攻防が展開される。 ジャックが耐え抜き、逆に葛西がカミソリボードに打ち付けられて流血。さらに、ジャックが頭突きで割った蛍光灯を躊躇なく葛西の頭に振り下ろしていく。コーナーで身動きが取れなくなった葛西に対し、ジャックからタッチを受けたデスペが「凶器を使わなくても痛いものは痛い」と、新日本プロレスらしい関節技、拷問技を葛西純に仕掛ける。しかし、ここで杉浦透がもらった黒バラの花束でカットに入り、杉浦のアシストを受けた葛西が、杉浦が持ち込んだ蛍光灯タワーを持ってデスペとジャックに体当たりし、蛍光灯が大規模に砕け散る。ここで杉浦とデスペの攻防となり、背中に蛍光灯を立てかけて右膝を打ち込むなど杉浦の強さが際立つ。葛西との連携ショルダータックルも決まる中で、杉浦の戦いが激しさを増し、ある出来事が起こる。

杉浦透の大流血というハプニングを感じる集団の中で

デスペとの膝をつき合わせてのエルボー合戦の最中、気合を入れるためか、杉浦はリングに散らばった蛍光灯の破片に額を打ち付けた。だが、打ち付けすぎたのだろうか、額からの流血が尋常ではなかった。試合後、本人がXで「興奮してテンション上がりまくって血流が良くなりすぎたのが原因」と述べているが、それは「タラリ」などというものではなく、「ドバッ」と滴り落ちるほどだった。私が杉浦の顔が向いている北側にいたこともあり、その異様な光景に特に驚かされた。北側のリングに近い席では、杉浦の流血の様子を見て「大丈夫なのか?」と不安げに話すファンもおり、試合を止めた方が安全なのではないかと感じるほどだった。

流血量の多い杉浦透

リング上ではデスペと葛西の攻防が繰り広げられているが、杉浦の流血は止まる気配がない。 コーナーに控える杉浦の下のロープは血で染まり、リングにも血が広がっていく。最終的には2回もテープで止血しなければならないほどの出血だったが、それでもタオルを頭に巻きながら戦う杉浦は、いつもと変わらない姿を見せていた。いつか大きな事故が起こらないことを祈ると同時に、プロレスラーとしての凄まじさを感じてしまった。

テープで応急処置の止血をする杉浦透

そのような状況下でも、デスペと互角に渡り合い、打開策を見出した杉浦が葛西にタッチ。 試合は葛西とデスペの攻防に移る。葛西が蛍光灯の三本束を持ってきて、蛍光灯ごと頭突きをしようとした時、一度動きを止めて何をするのかと思いきや、「尊敬していまーす!」と叫んで蛍光灯ごとの頭突きを放ち、蛍光灯を弾け飛ばした。「尊敬していますヘッドバットwith蛍光灯三本束」とでも言うべきか、見たことのない技を繰り出した葛西の勢いは止まらない。河津落としで、自分ごとデスペを叩きつけた。

葛西純の「尊敬していますヘッドバットwith蛍光灯三本束」

試合はジャックと杉浦のデスマッチファイターの蛍光灯とプロレスのリングを広く使った見ごたえのある攻防を経て再び、葛西とデスペの攻防となる。 葛西がデスペに強烈なラリアットを放ち、勢いを増していく中でデスペもマッド・スプラッシュからジャックとの合体式の雪崩式の技を狙うも杉浦にカットされて有刺鉄線ボードに叩きつけられてしまう。杉浦が追い打ちで投げ飛ばすと葛西がトップロープで息を吹き返し、「シェー!」の大合唱とともにデスペwith蛍光灯へのパールハーバースプラッシュを放つと4人が入り乱れる乱戦になる。

葛西純のデスペwith蛍光灯へのパールハーバースプラッシュ

互いに大技を繰り出す激闘の中、杉浦が右膝 with 蛍光灯九本束をデスペに叩き込む。 さらに、葛西と気合を入れての接吻、右肘とスティミュレイションの合体技を決め、蛍光灯を持った場外のジャックへのダイブ攻撃を放ち、葛西に試合を託す。観客は、試合がデスペと葛西の一騎打ちで決着するだろうという期待を高めていく。

杉浦透の場外ダイブ

葛西純が尊敬と嫉妬と共にデスペラードを突き刺した

エル・デスペラードは、代々木でのシングルマッチ、バーブクレフェスでの3WAYマッチと、葛西純に連敗していた。 そのため、この日はデスペラードが勝利するのではないかと予想していた人も多かったはずだ。私もまた、今日はデスペが勝つかもしれないと考えていた一人であった。

デスペラードは奥の手であるマーダー・ライドボムを返すも、手を握りながらの頭突きを放つも葛西にエルボーで阻まれ、垂直落下式リバース・タイガー・ドライバーを浴びる。 これもカウント2で返したデスペに、後楽園ホールは割れんばかりの大歓声に包まれる。そんな中、葛西は大量の蛍光灯をリング中央に広げ、その上でリバースクロスアーム式スティミュレイションを放つと、ついに3カウントが入る。今回の戦いも、またもや葛西の勝利となった。

葛西純のリバースクロスアーム式スティミュレイション

3カウントが入った瞬間、後楽園ホールは爆発したかのような盛り上がりを見せ、入場曲に合わせての大・大・葛西コールが響き渡る。 私もまた、その熱狂に身を任せて叫んでいた。そんな中、葛西はいつものように「ストップ・ザ・ミュージック!」と叫んだ。

「尊敬と嫉妬でいくらでも強くなれる」(葛西純)

葛西がマイクを握ると、いつものようにエル・デスペラードを「デスペ氏」と呼びながら、多忙なスケジュールの中、このリングに上がったことに対して感謝の言葉を述べた。

そして、「体が大きい訳でもなく、スポーツで実績を残した訳でもない自分が、50歳という年齢になっても成長できるのは、尊敬と嫉妬があるからだ」と語り、エル・デスペラードに対する尊敬と嫉妬があることを伝えた。

デスペ氏に「尊敬と嫉妬」を伝える葛西純

試合前の煽りVTRでも語られていた「尊敬と嫉妬」という言葉を、再びリング上でマイクを握って発した葛西純の言葉には、強い説得力があった。

私も「尊敬と嫉妬」という言葉について考える。人は尊敬することで、その人に追いつこうと努力する。しかし、尊敬だけでは難しい。自分でもできるだろう、自分ならより良くできるだろう、自分なりのやり方で何かを生み出すことができるという気持ちが含まれる嫉妬があるからこそ、人は成長できるのだ。尊敬と嫉妬が両輪となることによって人は成長するという言葉には、目の前でそれを原動力として凄まじい戦いを見せた葛西純がいるからこそ、圧倒的な説得力があった。

そんなカリスマ・葛西純の言葉に対し、エル・デスペラードは等身大の姿と率直な言葉で応えた。

「死ぬ気はないけど死力を尽くす」(エル・デスペラード)

エル・デスペラードが右手でマイクを握る。 少し前傾姿勢でマイクを握る右手が小刻みに震え、その震えが大きくなり、言葉を発するのをためらう。

震える右手を抑えてエル・デスペラードが話す

蛍光灯にビビって技が小さくなったことを吐露した上で、IWGP Jr.のタイトルマッチを申し込む機運が高まり、会場がざわめく。IWGP Jr.のシングルチャンピオンでありながら、葛西純に勝てない現状に触れ、タイトルマッチをしたい気持ちを吐露する。しかし、新日本プロレスのレスラーとして、ベストオブスーパージュニアで責任を果たさなければならないと語る。かつて約束したスーパージュニア優勝をもう一度果たした上で、葛西純とのタイトルマッチを申し込むと宣言したデスペは、実に堂々としていた。

エル・デスペラードと葛西純が向き合う

スーパージュニアに向けては、葛西とのシングルで叱責されたからこそ「死ぬ気で戦う」という言葉は使わない。 しかし、「死力を尽くして優勝を目指す」と語ったデスペの姿は、自らが言うように人様からお金を取れる、「金を払ってでも見たい」と思わせるレスラーであった。そのデスペの言葉に対して葛西は「自分が戦いたいのはIWGP Jr.の王者でもなく、スーパージュニア優勝者でもなく、エル・デスペラードである」と返し、会場を沸かせた。そして、お互いが蛍光灯が光り輝くリング中央で座礼を交わす。このやり取りが、何とも言えない素晴らしい時間だった。

葛西純がデスマッチの素晴らしさを語ってついてこいと話して締める

そんなに簡単にスーパージュニアを優勝できるわけでもない。 どこかで負けてベルトを落とすかもしれない。しかし、遠くない未来に必ずや実現するであろう2回目の葛西純とエル・デスペラードのシングルマッチを、見逃すことなど到底できないと感じさせる、とてつもなく熱い宴だった。

最後に抱擁した葛西純とエル・デスペラード

FREEDOMS フリーダムズ プロレス

https://pw-freedoms.co.jp/event_detail.php?id=3064

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。