総合職共働き人事コンサルのブログ

大人の都合がこの自殺の原因だったのではないか (桜宮高校体罰問題を考える・その3)

ここ2回、書いてきた桜宮高校体罰問題について。ひとまず、この投稿でまとめにする。

  1. 体罰だけでは人は死なないのではないか
  2. この出来事をを生んだ空気こそに問題があるのではないか

この2つが過去の投稿で言いたかったこと。

自殺が生み出される空気が作られた体育会系バスケットボール部がなぜ、存在できたのか、エリート部活動が原因で死を選ぶような高校生・中学生が生まれないようにするにはどうしたらいいのか。

日常では許されないことがこの場では起きていた。なぜ、それが体育会系部活動では許されたのかということについて。

これは学校の生き残り競争と大人の都合が原因ではないだろうか。

少子化の中、学校は生徒の獲得競争に大きな力を割くようになっている。東大や京大、早慶上智といった有名大学への進学実績もない学校への志望者は年々減ってきており、私立であれば存続も危うい学校が存在する。また、公立の学校であっても、定員割れが続くような学校については統廃合の対象となる。

結果として、勉強以外で生徒を獲得する方法として力を入れるのが部活動なのである。生徒に全く興味のない先生が出てくるマンガ、『Vivo』(※1)の中に教育現場の現状を表す言葉があるので引用させていただく。

教育現場ほど、分かりやすい「才能」に弱いんだよ

勉強という側面では偏差値で個々の才能が測られ、部活動では大会での結果というものさしで生徒を測る。「一人ひとりに対してきめ細かい教育を…」といっていても、学校の生き残りのためにはそれぞれの学校が社会に対して才能を見せ続けて生徒を集めている現状がある。

もう1段階深める。

先生の側から見ると、生徒の才能をどうにかして育て、社会に認められるようにした者は出世するのである。

大阪府の公立で初めて体育科を設置した(※2)桜宮高校。体育科の成功は桜宮高校に所属する先生の地位と名誉を生み出してくれるはず。そのためにあらゆる手段を使って生徒に結果を出させようとした。それが一般的には認められにくい行為であっても行うことが出来る。これが、通常の場では許されないことが許される空気の源泉だったのではないだろうか。

このことこそが、今回の自殺の原因の根本にあると思うのだ。

学校にとっては自殺した生徒がキャプテンを務めていた男子バスケットボール部がいい結果を出すことが至上命題であっただろう。先生はそのために体罰を含んだ手段を用いる。生徒はバスケットボールをするために学校に入り、もし、やめると、単位が取れずに退学を余儀なくされる可能性もある。でも、顧問の体罰はイヤ。部活はやめられない。そんな中で自ら命を断ったように思える。これを体罰単体の問題にしてはならないと思うのだが、いかがだろうか。

学校の評判や先生の出世などの大人の都合がこの自殺を引き起こしたといっても過言ではないと思う。

勉強や部活動の才能のある子どもに対して特待生などの制度があること自体については許される範囲であると私は考える。

ただ、生徒は使い捨ての道具ではないのだから、使っている手段が適切ではない場合はブレーキをかけなければならないし、生徒の才能を上手く活かしきれなかった場合にポイ捨てをしてしまうような姿勢は教育機関としては行なってはならない。

バランスを取るのは難しい。特待生やスポーツ推薦で認められていた才能の芽が出なかった場合、学校側が特待生扱いを解除していいのか、解除してしまうと退学を余儀なくされる生徒もいるだろう。その狭間で悩み、自殺してしまう生徒が出てもおかしくない。

確固たる解決策があるわけではない。ただ、学校や先生は生徒を自分たちの食い物にしてはいけない。しかし、自らの生活のために、生徒の才能を学校のために利用することを全否定することも出来ない。だからこそ、生徒がその才能を諦めたいと思った時やその競技から離れたいと思った時にそれが出来る環境は作らないといけない。そうすれば、激しい体罰や挫折があったとしても死を選ぶようなことは起こらないと思う。

逃げ道であっても、学校が生徒に体罰とぶつかり続ける道とは異なる道を見せることが出来たなら今回の自殺は起こらなかっただろうし、違う道を最低限用意しておくことは教育機関としての義務だと思うのである。

 

ひとまず、これを自分なりの解決案とさせて頂き、今回の桜宮高校体罰問題についての記述を終えようと思う。お付き合いいただき、ありがとうございました。ご意見をお待ちしております。

 

※1

※2

「桜宮高校バスケ部キャプテンの自殺の原因は「体罰」ではない」-Business Media 誠

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1301/15/news022.html

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。