総合職共働き人事コンサルのブログ

今回は世界の状況もあってビジネス色が薄まっている気がした~「COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 06月号 [雑誌]」~

唯一、定期連載中の雑誌。いろいろな国の記事を選び翻訳した上で、一冊の本にしている。今回の特集は「「原子力」をリアルに考える」がトップ、フクシマを受けて、エネルギーの未来がどうなるのかを考える記事や「英国の再処理工場」「25年後のチェルノブイリ」など様々な観点からの記事がある。日本国内では絶対に批判されるような風刺マンガを載せているのも興味深い。
下記のサイトから
http://www.caglecartoons.com/viewimage.asp?ID={F3E7AB1B-9C39-4C0B-8097-F3B5E74983E1}
http://www.caglecartoons.com/viewimage.asp?ID={0904CE0B-9177-475F-9AD6-9078972BD8A6}
特集以外でも「日本がんばれ」の記事に満たされていた前号(詳しくは「震災における外国の記事紹介においては、これぞクーリエという強みが発揮された号であったと思う。~「COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 05月号 [雑誌]」~」http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-531.htmlまで)と比べて、日本の対応を批判するような記事が多い。まあ、当然かも知れないが。自衛隊を見る目が変わっているというような記事では

P106 ワシントンにある戦略国際問題研究所(CSIS)の日本研究家、マイケル・グリーンは、今回の危機で自衛隊は「立派に責務を果たしている唯一の機関」だと指摘する。政治家に対する評価は分かれているし、原発を所有する東京電力の経営陣は批判さらされているからだ。

と東京電力を断罪している。好きな連載の1つである森巣博の「越境者的ニッポン」では

P108 地震・津波は天災だったかもしれないけれど、東電・福島第一原発で起こったことは、天変地異がたまたま引き金となっただけの人災である

と切り捨てた上で、原発の今後に関する悪い予測を「風評被害」で片付けてはいけない。ということで、レベル7の危険、「ただちに健康に影響を与えるものではない」という言葉のおかしさについて触れている。そして、東電の広告、コストカット、「想定外」ではないのではということを以下の文章で述べている。

P108 ――(保守管理の規定違反にかかわり)福島第一原発で新たに33機器で点検漏れが見つかった。(中略)最長で11年間にわたり点検していない機器があったほか、簡易点検しか実施していないにもかかわらず、本格点検を実施したと点検簿に記入していた事例もあった。(大震災前の2011年3月1日「福島民友ニュース」)
巨大な広告スポンサーとして東電はメディアに金をばら蒔き、「原発は絶対に安全」とその言論を誘導してきた。事故当時の社長・鈴木正孝は、日本広告学会長である。徹底的なコストカッティングとメディア界を牛耳った点を評価され、頭角を現したと言われている。原発では決してしてはならない安全保守に関する部分まで、大鉈を振るっちまったんじゃなかろうか。
巨大地震の発生は、しっかり充分に予測されていた。だから「想定外」の出来事にあらず。この際「想定外」という言い訳は通用しないはずだ。現に同震災で、福島第一原発から北に約120km離れた太平洋岸にある東京電力・姉川原発の被害は、軽微で済んでいる。これは津波の高低による被害の差ではなかった。福島第一原発を襲った津波の高さは14m前後であったが、姉川原発ではそれが17mにも達したと推定されている。

と。そして、これを人災として断定した後、損害賠償について触れる。

P108 しかし損害賠償額があまりにも巨大となるので、一私企業が起こした被害にもかかわらず、国が東電の尻を拭う形となるそうだ(朝日新聞。11年3月25日)。
広告主としてばら蒔いた大金で言論誘導はできた。安全保守を無視したコスト・カッティングで利益は上がる。結果として生じた事故の損害賠償は、最終的に国民が負担することになる、これが、本連載でわたしがたびたび主張してきた「利潤の私益化・費用の社会化」の典型例である。

この損害賠償については、東電が出来る賠償、2兆4千億の積立を崩すのはもちろん。解体も可能な限り行ってから、国が入るべき。と私は思う。少なくとも積立があるのに税金や電力料金値上げで対処するのはおかしいだろう。絶対におかしい。
原発についても、興味深かったが、それ以上に興味深い箇所があった。それが、2つ目の特集のように扱われていた「日本では報じられない「中東ドミノ」最前線」である。大震災の影響で辛うじてリビアの空爆のみが辛うじて報じられている日本国内では知り得なかったリアルで、生々しい記事があった。リビアの反体制派の若者一人一人の物語は読み応えのあるものだった。それらの記事の中で、マスメディアを研究している学生として、見落とせない2つの記事があった。リビアで拘束された米紙の4人の記者の話とアルジャジーラについての記事。リビアで拘束された4人の記事は臨場感溢れる中にリビアを知るヒントがちりばめられている。その中で報道という観点を考えざるを得なくなったのが以下の箇所。

P49 リンジーは私たちの車の横に、横たわっている死体を見つけた。それがモハメド()現地の運転手)のだったのかは、いまもわかっていないが、そうだったのではないかと私たちは恐れている。
彼が殺されたとしたら、私たちは、自分たちのせいで罪のない人間を死なせてしまったという罪の重みを、一生背負っていかなければならない。自分たちの下した決断が間違っていたせいで、そして、人命を失うだけの価値などない記事のために。どんな記事だろうとそんな価値はないのに、目のくらんだ私たちは、そのことを認めようとしなかったのだ。

その目的地に向かうかどうかは記者の中で意見が分かれていた中での結論。その結論の結果記者じゃない人を死なせてしまったのかもしれない。取材する中で記者ではない人を自分たちのせいで間接的に殺してしまったのかもしれないということは、職業倫理に外れているのかもしれない。でも、そうなる危険を犯さないと得られない情報もあるとしたら、どうすればいいのか。それには正解はない。その時に判断し、自分なりの理由付けが出来ればいい気がする。というのは甘いのかな。そして、アルジャジーラについて。アルジャジーラのタブーについて、

P59 そんなアルジャジーラにもタブーがある。カタールだ。
同局ではカタールの指導者たちに批判的な報道はめったに行われない。ウィキリークスが9・11にカタール人が関与していた可能性を示唆する文書を公開したときも、ほとんど取り上げなかった。また、2022年のFIFAワールドカップの開催誘致のために、カタール政府の関係者が選考委員に100万ドルの賄賂を贈っていたことも批判していない。

という側面があることに驚いたとともに、放映している映像について、

P58 同局が放映するイスラエルや米国のミサイル攻撃で黒こげになった遺体の映像には、彼女(アル・アンスティー 同局の英語放送の統括)も胸が悪くなり顔をそむけることもあるという。
「ホラー番組ではないかと思うことも少なくありません。しかしこうした映像は真実を伝えています。奇妙な緑色のレーザー光線だけが爆撃ではありません。銃撃戦や爆撃の結果、こうした死や流血そして破壊を招いているのです

と述べられている。悲惨な映像の放映については賛否両論であるのは事実。でも、自分は賛成。事実としてそこにあるものを放映しない理由として、悲惨だからというのはその出来事から目をそらす事に他ならないからである。だから、どんなに気持ち悪く、凄惨な映像だとしてもしっかり流すべきだと自分は思う。それが、リビアにおける空爆によるものであったり、アメリカ軍によるビンラディン氏殺害などある程度は情報として共有されているものであるなら尚更である。その出来事に無言でいることで承認していることに他ならないのだから。だからこそ、情報は出来る限り共有するべきだろう。
そんな考えさせる、気持ちが揺らぐ記事の中に

P78 「がんばりすぎ」が色男の寿命を縮める
性交渉の最中に突然死した男性の90%が、本来のパートナーと一緒ではなかった――。マドリードの病院によれば、浮気のストレスやがんばりすぎが心筋梗塞などを起こす確率を高めているという。ちなみに、定期的な性交渉は、スポーツと同じく男性の突然死のリスクを低下させるというデータもある。

というのがあるのもクーリエの良いところ。最近はめっきりないけど、無理して頑張っているような気がする自分だから、気をつけよう。というのは心の中にとめおくべきかな。
今回は世界の状況もあってビジネス色が薄まっている気がした。でも、好きなコラムがイマイチだったのと、クーリエっぽい視覚的に楽しませようとしただろうドコモの広告が、自分の中ではイマイチだったので☆4つ。

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。