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世間とプロレスと正面から向き合っている観客の熱い一冊 『私、プロレスの味方です (新風舎文庫)』

なんともいえない微笑、というか、嘲笑。「プロレス行かない?」と誘うと
10人中9人が返してくる反応がこれ。「つまらない」とか「殴り合いはイヤ」とか、
「何が面白いの?」と聞かれるところまでいかない。
プロレスについて話を振ると、嘲笑で話が終わってしまう。ものすごく語りたいのに。
もし、ボクシングの亀田兄弟の話をしたらもっと話が続くだろう。
「実はそんなに強くない」とか「判定って微妙」とか話に続く。
でも、プロレスはそれが許されない。
プロレスがテレビからほとんど消え去っている今だから、そうなっているだけで、
昔、ゴールデンタイムでプロレスがやっていた頃は違うんだろう。と思っていた。
多くの人がプロレスについて熱く語れる。
少なくとも、何とも言えない反応でウヤムヤになることはない。と考えていた。
でも、実際は違ったらしい。

プロレスについてしゃべろうとするとき、のどのあたりに何かイガラッポイものを
感じるのは、きのうやきょうのことではない。「プロレス」とこっちが発音したときに
相手がつくる表情、これがイガラッポサを生んでくれるのだ。平たく言えば、
プロレスを馬鹿にし、軽んじている顔つきなのです。(P15)

の書き出して始まる。1979年、アントニオ猪木がモハメド・アリと戦ってから
2年経った後、藤波辰巳が活躍し始めた頃に出版された。
そんな時期でもプロレスは軽んじられていた。そんな状況で「プロレスの味方」である
筆者がひたすらプロレスについて語った本。少し後に
元レフリーのミスター高橋の
『流血の魔術最強の演技―すべてのプロレスはショーである』で「プロレスはヤラセ」と
いうことが暴露された。この確かに面白いけど、スキャンダルな面白さしかない本に
対してこの本はプロレスへの愛が詰まっているんです。プロレスと八百長についても、
反対が5秒までという一風変わったルールについても、「暗黙の了解」についても
プロレス好きが持っているいろんな歯がゆさも含めて語っていく。
プロレスの味方(と言える所までプロレスを見ているのかは微妙だが)として、
「そうなんだよ!」「プロレスいいよなぁ!」と思える、
プロレスについて語られているいとおしい本。
平成のプロレス好きとして、この本の時代のメジャー三団体が全日本プロレス、
新日本プロレス、国際プロレス(!)であることが新鮮だし、
新日のアントニオ猪木と全日のジャイアント馬場が組んだ、
1979年、「8.26」・「プロレス夢のオールスター戦」のルポは引き込まれた。
プロレスが詰まっている1試合だったことが伝わってくる。
もっと、いろいろ書きたい。
けど、終わらなくなりそうなので、ここまでにしておく。でも、最後に1つ。
今のプロレスは“すごみ”がなくなってしまった。だから、ダメになった。
“昭和”のプロレスファンは言う。昔の試合の映像はピリピリしていて、
見る者を惹きつけるのは事実。
でも、自分にとっては今のプロレスがプロレスで、つまらないとは思わない。
“すごみ”ではなく、“すごさ”では今の試合が勝っている。間違いない。
だから、現IWGPチャンピオンの棚橋弘至も、全日本プロレスの
前三冠チャンピオンの諏訪魔も凄いですよ。と言いたい。
平成のプロレスも良いもんです。
来年も1.4(1月4日)に東京ドームで大会があります。
今、日本で最も派手で、大きな会場でやる大会。
行ってプロレスの味方になってくれる人が1人でも増えてほしい。
やっぱり、熱くなってしまった。☆4つにしようと思ったけど、
プロレス愛で☆5つ!歯がゆい反応にイライラするけど、
それを打破できない中で葛藤し、世間とプロレスと正面から向き合っている観客の
熱い一冊。ってことで!プロレス愛が深まる1冊です。文章も磨かれています。
ちょっと古いけど、昭和プロレスの匂いが詰まっているし、
資料としても必読です。

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同意があったりしたら反応をして頂けると幸いです。なるべくというより出来る限り私も反応します。
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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。