総合職共働き人事コンサルのブログ

世論調査はその制度上の問題について、考える必要がある。~西平 重喜著「世論をさがし求めて―陶片追放から選挙予測まで」を読んで Part4~

今回は世論調査方法について、日本と諸外国のマスメディアにおける世論調査の違いについて、こう書いている。

P187 日本の大新聞社やNHKやテレビ、ラジオのキー局が、諸外国の大新聞社や放送局と違う点を注意しておこう。外国では大新聞社は全国的な問題や国際事件を報道し、国内のローカルの事件は地方紙に任されている。そして通信社の取材をもとに、その意義や解説を記事にする。もちろんその資料をチェックするため、拠点に支局を置き特派員を派遣するが、ごく少ない。世論調査は調査機関のものを買うか委託し、フィールド・ワークを自ら行うことはない。
これに対して日本の大新聞社や中央の放送局は地方版をつくり、全国各地でも地元紙と競争している。そのために全国に70前後の支局、通信部などを配置し、みずからニュースを取材し、通信社の資料はチェックのために使う。このように大新聞社、NHKなどは全国的なネットを持っているので、各地で調査員を雇うことが容易である。そこで世論調査を専門とする会社に委託せず、自前で調査を行うことができる。

そして、その利点を以下のように記している。

P187 1,突発事件が起きたとき、臨機応変に調査できる。
2,本社に世論調査専門の部門があり、専門職や経験、理解の浅い者がいる。ただし、だんだん仕事がルーチンワーク化してきたので、むしろ専門の調査機関に任せるべきだという意見もある。
3,調査の実施に関連する連絡の費用や、資材費、コンピュータの費用などは、社内の一般の経費でまかなわれ、コストにとらわれない調査ができる。
4,各社が同じテーマについても、それぞれの視点から調査するので、比較や多面的な分析ができる。
5,調査の結果が紙上に公表され、世論調査を一般国民に親しみ深いものとしている。

ここでは利点のみが取り上げられているが、<1>臨機応変さと<4>それぞれの視点<5>親しみに関してはマイナスも生んでいるように思う。
1,臨機応変さ
自らの都合で世論調査を行い、紙面を埋めることという側面もある。特に一面にデカデカと載る。社会の事象や隠れていることをスッパ抜くでもなく、自らが世論調査というものに力を入れ、それを一面で報じること、ケータイが含まれていない調査対象ということで偏りがある可能性があるにも関わらずだ。これが好ましいという疑問は強くある。自ら行うと世論調査を一面で報じることにどんな価値を見出すことが出来るのか。
2,それぞれの視点
一番有名な世論調査は内閣の支持率調査だろう。これは、どこの新聞社も支持するのか、支持しないのか。という2択になっている。この支持するor支持しないの数字にどれだけの意味があるのか。「なぜ」支持するのか、しないのかを多くの人に問い、それを大きく取り上げ、問うことが大切だと思うのだが。それぞれの理由には支持政党の話からイメージの話まで様々な理由があるだろう。それぞれの理由をしっかり分析した上で、議論の材料とするべきなのに。支持するorしないのポイントだけに大きく注目することについて疑問を持つべきではないか。
3,親しみ
世論調査を親しみ深いものにすることの利点がこひやまには分からない。その親しみが、無意識で無根拠な信頼につながってはいないか。新聞への信頼と世論調査への信頼は区別して考える必要がある。もちろん、新聞が100%信頼できるものである。ということは言えないが、それ以前に、世論調査はその制度上の問題について、考える必要がある。そうであるのに、親しみということを利点としてとらえることに疑問を抱く。
1. 世論調査とは?(筆者が考える)と世論調査と世論は・・?
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2. 日本人はマスメディアを強く信頼する・日本人と世論調査
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-428.html
3. 予測報道の影響
http://kohiayu.blog5.fc2.com/blog-entry-480.html
4. 自前調査のメリット
5. ブルデューの公準

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小檜山 歩

コンサルタント日系総合コンサルティングファーム
渋谷のITベンチャー→日系人事コンサル。会社ではコンサルしながらCSRの活動もしてます。いろいろ無秩序につぶやきます。2017年5月から1年間タイでトレーニーとして働いてました。今は帰ってきて日本で働いてます。